プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)出身の30代の2人が、商品開発から販売戦略まで、P&G在籍時に培ったマーケティングの知識やフレームワークをフルに活用し挑む新・東京銘菓づくり。連載第3回では、ブランド・商品構築について掘り下げながら、その土地に根付いた銘菓をつくる上で欠かせない“その土地らしさ”を決定づける3つの要素について説明していく。
森川智行氏 本題に入る前に、まずは前回までのおさらいをしよう。私たちは今、P&G在籍時の経験、および現在経営するマーケティング支援会社、MD(東京・港)で多数の企業を支援する中で培ったマーケティングの知識やフレームワークを基に、「東京ばな奈」のように愛される新・東京銘菓をつくろうと奮闘している。
クッキーさえつくったことのない、お菓子づくり初心者の2人が新・東京銘菓を開発することになった理由は2つある。1つは、誰もが知るような東京銘菓ブランドの開発はマーケターとして最高に誇れる仕事ではないかと感じたこと。もう1つは、参入に足る十分なマーケットサイズ(=Size of Prize)と、勝算(=Right to Win)があると判断したからだ。
せっかく新たな試みをするのであれば、同じような思いを持った同志を集めて一緒につくったほうが面白い! と、Facebookグループを通じて同志を募り、商品開発の過程やその背景にあるマーケティング理論などをオープンにしつつ日々商品開発にいそしんでいる。これが前回までの内容だ。詳しくは、第1回、第2回の記事を読んでほしい。
そして今回は、我々が実際に行ってきた、商品開発の泥臭い軌跡とそこからの学びについてお話ししていきたい。
商品そのものに“東京らしさ”を感じてもらうために必要な要素とは?
P&Gといえば、言わずと知れたマーケティングカンパニーである。そうであるがゆえに、「P&Gマーケティング」というと、ブランド構築や商品設計、マーケティングに関する完成されたフレームワークがあり、それを応用すれば業界業種問わず成功する――。そう思っている人もいることだろう。そういった人々にとっては、これから目にする内容には驚くかもしれない。なぜなら、私たちの挑戦は完璧とはかけ離れており、「新・東京銘菓づくりに必要な要素」に最短距離でたどり着いていないからだ。失敗を繰り返しながら少しずつ前に進むと同時に、この連載を行っている。
しかしこれがマーケティングのリアリティーだと思う。すべての仮説が正しいわけなどない。ブランドや商品というのは、紆余曲折(うよきょくせつ)をへて失敗を幾度となく重ね誕生するものだ。生々しいブランドづくり、商品づくりの裏側がここには書かれている。ぜひそのリアリティーを楽しんでもらえたらと思う。
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