プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)出身で、現在は企業のマーケティング支援を手掛けるMD(東京・港)の若き経営者2人が挑む、「『東京ばな奈』に匹敵する新・東京銘菓づくり」。商品開発から販売戦略まですべてP&G思考に基づき行うことで、後発ながら「東京銘菓」という巨大市場でも勝算があると見込む。前編に続き、今回は商品開発において、2人がなぜ「マーケターの直感」を重視するのか。また、「プロセスエコノミー」という手法を取り入れた理由を解説する。

商品に使用する原料の生産者(中央)を訪ねる2人。MD代表の石井賢介氏(右)と、同執行役員兼ブランドリーダーの森川智行氏(左)(画像提供/MD)
商品に使用する原料の生産者(中央)を訪ねる2人。MD代表の石井賢介氏(右)と、同執行役員兼ブランドリーダーの森川智行氏(左)(画像提供/MD)
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 前回は、MD代表の石井賢介氏が、後発商品であっても「東京銘菓(土産)」という巨大市場に勝機があると考えた理由について解説した。石井氏は、「すべての新規プロジェクトにおいて、意思決定の基準は、『マーケットが大きいか』『十分な勝算があるか』以外にあり得ないと考えている」と断言する。

▼前編はこちら P&G出身者が挑む! 舞台裏に独占密着、「新・東京銘菓」開発ルポ

 今回は、その「理由」についておさらいをするところから始め、それらをP&G思考に落とし込んだ場合、なぜその理由が新規プロジェクトにおいて欠かせないのかをより具体的に石井氏が解説する。


「Size of Prize」と「Right to Win」で判断

石井賢介氏:まずなぜ今回我々が後発でありながら、「新・東京銘菓をつくる」プロジェクトに勝算があると見込んだか、いま一度伝えたい。まずは下記の2つだ。

 A.十分な購入者とマーケットサイズがあり魅力的だと考えた

 B.十分な勝算があると考えた

 さらにBを分解すると、以下2つの理由になる。

 a.競合商品に「東京らしさとは?」を感じる部分において隙があり、かつイノベーションが一定期間起きていない市場であること

 b.自社でクオリティーの高い商品をつくれるという確信があること

 P&G的に言うと、Aは「Size of Prize ≒ 賞金の大きさ」、Bは「Right to Win ≒ 勝つ権利」とされる。P&Gでは、すべての新商品発売をこのアングルで考えている。さらにいうと、このA、B-a、B-bは、マーケティングで活用される分析ツールの1つ「3C分析」における、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(会社)とほぼ一致する。マーケティング思考で新規事業を考えるとは、このことだと私は考えている。

 実際にはそれぞれの項目に果てしなく細かい分析があったのだが、ここでは割愛する。新規事業に対して「GO」を出すか、出さないか判断する際に、物差しとしてこのアングルで物事を考えるという癖があるとよいのではないだろうか。

個人的な体験と直感を信じる

 教科書的には上述したようなことなのだが、実は私が本当に伝えたいポイントはこれではない。仮に上記のようなマーケティング思考のプロセスで新規事業を考えればうまくいくのであれば、誰でもどんな会社でも新規事業をつくれるし、成功できるだろう。しかし実際にはなかなかそうはいかない。それはなぜか。

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