米OpenAIが開発した「ChatGPT」の登場をきっかけに、新たな技術トレンドとして生成AI(人工知能)が世界的な潮流となっている。生成AIの登場はスタートアップ企業にどのようなチャンスをもたらすのか。日本政策投資銀行(DBJ)グループ会社のベンチャーキャピタル、DBJキャピタル(東京・千代田)のメンバーが解説する。
近年、AI(人工知能)技術は急速な進歩を遂げ、その中でも特に文章や画像を自動的につくる生成AIは、自然言語処理の分野で画期的な成果を上げている。既に多くの産業やサービスで活用され始めている現状を踏まえ、今回はベンチャーキャピタル(VC)の活動を通して感じている大規模言語モデル(LLM)のトレンドを概観したい。以下では、生成AIを活用した代表的なサービスについてカテゴライズし、具体的なスタートアップ企業のサービスや、その他注目のプロジェクトについて見ていきたい。
生成AI活用サービスをつくりやすくするフレームワークに脚光
「GPT(Generative Pre-trained Transformer)」は、米OpenAIが開発した生成AIのための大規模言語モデルである。GPTはGPT-1からGPT-4までのシリーズが存在する。従来必要だったファインチューニング(データを使った再トレーニングによる微調整)が不要で、プロンプトと呼ばれる入力に基づいて様々なタスクに適応する能力を備える。このGPTを活用し、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)上でチャット形式で質問でき、それに応答してくれるサービスが「ChatGPT」だ。
2020年に発表されたGPT-3は、自然言語処理だけでなく、翻訳や要約、コーディングなど多様なタスクに対応できるのが特徴だった。そして23年に発表された最新版のGPT-4は、さらなる精度向上と機能の拡充を実現している。パラメーターの数はGPT-3を上回り、大規模な学習データと高度なアーキテクチャーを組み合わせている。また、他のAIモデルとの連携や、より高度なタスクへの適用も可能になった。
GPTは高い自然言語処理能力を備えることから全産業横断で注目を浴びており、GPTを効率的にサービスに組み込むためのプロダクトの開発が進んでいる。こうしたことから実ビジネスで使えるサービスがスピーディーに登場しており、巨大な「GPT経済圏」が構築されつつある。
背景にあるのが、外部のアプリやシステム同士を連携させるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)によってチャット機能をサービスに組み込みやすくなっていることだ。GPTが学習したもの以外のデータを利用したり、場合によってはGPT以外のLLMに柔軟に接続したりして、より精度を高めやすくなり、結果として、市場浸透が進みやすい環境が整っている。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー