2040年代に100兆円超えの巨大市場に発展するといわれる宇宙産業。イーロン・マスク氏の米SpaceX(スペースエックス)をはじめ、世界では開発競争が進んでいる。日本企業の参入余地は残されているのか。日本政策投資銀行(DBJ)子会社のベンチャーキャピタル、DBJキャピタル(東京・千代田)のメンバーが解説する。
昨今、民間企業による宇宙関連のニュースを目にする機会が増えている。ロケット打ち上げサービスなどを行うイーロン・マスク氏率いるSpaceXだけではなく、国際宇宙ステーション(ISS)に日本の民間人で初めて滞在した実業家の前澤友作氏に関するニュースなどが記憶に新しい。
これは当初、軍事や科学技術開発などを目的として国家が主導した宇宙開発から、民間企業がビジネスを目的として宇宙領域に参入し、実際に大きな影響を及ぼせる環境が整ってきていることの証左である。
一般的に宇宙ビジネスの不確実性は他の分野よりも高い。それでも宇宙ビジネスには多くの企業が参入し、多額の投資マネーが流入している。米モルガンスタンレーによると、宇宙産業は2040年代には市場規模が100兆円を超える大きな可能性のある分野と予測されている。
その一方で、変化が早く、目の前のビジネスとのつながりを直感的に感じにくいため、一般には全体像の把握が難しい業界でもある。本稿では宇宙業界にまつわる「3つの疑問」に対して分かりやすく解説していきたい。
宇宙開発の新潮流「New Space」とは?
【疑問(1)】なぜ宇宙業界にリスクマネーが集まるのか?
世界での宇宙業界への投資金額は、17年の26億200万ドルから21年には154億ドルと、4年間で5倍以上に拡大した(下図)。22年には株式市況の悪化に伴い、宇宙ビジネスを展開する企業を含む新興企業への投資額は減少したが、それでも投資家による宇宙領域への関心は引き続き高いと言って差し支えないだろう。
主な資金の出し手としてはベンチャーキャピタルが挙げられ、ハイリスク・ハイリターンを求める投資家から投資対象として選好されている。
なぜ、これほどまでの投資が宇宙業界に投じられるのか。それは「市場規模が大きく・成長すると見込まれているから」ということに尽きるが、この理由を深掘りしていくと“宇宙業界”と一言で言ったときに分からなかったポイントが見えてくる。
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