日本政策投資銀行(DBJ)子会社のベンチャーキャピタル、DBJキャピタル(東京・千代田)のメンバーが、注目ジャンルの新潮流を解説する連載。今回は、女性の社会進出に応じたサービスを展開する注目スタートアップを3つの角度から解説する。

(写真/Shutterstock)
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 社会の大きな変化に対して新しいサービスが求められるのは自然なことだ。30~40年前までは、専業主婦の妻という家庭が主流であったものの、昨今は女性が働くことが当たり前になっている。国際比較で日本は女性の社会進出が遅れているといわれるものの、国内の労働人口の減少も相まってか、徐々に女性の社会進出はあらゆる業種で進み、近い将来、男女の給与間格差はほぼなくなっていくのではないかと想像される。

 今回は女性のキャリア感およびライフスタイルの変化に対応した新サービスを、3つの角度から紹介したい。

(1)共働き世帯の拡大に対応したサービス

 下図の通り、2021年においては国内の全世帯のうち70%以上が共働き世帯となっている。

共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯、出所/内閣府 男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」)
共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯、出所/内閣府 男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」)

 一方で、共働き世帯のうち6歳未満の子供を持つ夫婦における1日の育児・家事関連の時間は、妻が365分であるのに対して夫はその4分の1以下の82分というデータもある。まだまだ男性の家事・育児の時間はあまり増加しておらず、女性は働きつつも家事・育児の負担を負っているようである。

 とはいえ、下図の通り、男女間の給与間格差は長期的には縮小しており、妻側の仕事についても仕事量・労働時間・仕事内容において負担・責任も徐々に増していると思われる。働く女性の家事育児に振り分けられる時間は短くなっており、仕事と家庭・育児を両立するためのサービスの需要は必然と高まっている。

男女間所定内給与格差の推移(出所/内閣府 男女共同参画局「令和3年版 男女共同参画白書」)
男女間所定内給与格差の推移(出所/内閣府 男女共同参画局「令和3年版 男女共同参画白書」)

 もちろん保育園などの公的な機関が担う役割は大きいものの、スタートアップをはじめ民間企業の事業も拡大している。従前は、一律料金で平準化されたサービスを提供する企業が多かったが、子育て世代の多様な需要に対して個人と個人をマッチングするという方向性が出てきている。

 例えば、家事スキルを生かして働くハウスキーパー(タスカジさん)と、家事をお願いしたい人とをつなぐタスカジ(東京・港)や、出張料理・作り置きを依頼したいユーザーと、料理の知識や経験、スキルを生かして働きたいシェフ(料理人)をマッチングするシェアダイン(東京・港、DBJキャピタル投資先)、アクティブシニアと子育て世代をマッチングするぴんぴんころり(東京・渋谷)などだ。

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