日本政策投資銀行(DBJ)子会社のベンチャーキャピタル、DBJキャピタル(東京・千代田)のメンバーが、注目ジャンルの新潮流を解説する連載。今回は、世界で注目を集める植物肉や培養肉、精密発酵といった代替たんぱく関連の最新グローバルトレンドを紹介する。

米UPSIDE Foods(アップサイドフーズ)の培養鶏肉を使ったサラダ(写真/UPSIDE Foods)
米UPSIDE Foods(アップサイドフーズ)の培養鶏肉を使ったサラダ(写真/UPSIDE Foods)

 大豆など植物由来の原料から作られた「植物肉」をスーパーの店頭で目にする機会が日本でも増えてきた。これらの代替たんぱくのトレンドは国内のみならず世界的にも日々目まぐるしく変化しており、未上場の成長企業へ投資を行うベンチャーキャピタル(VC)の投資領域としても注目されている。今回はVCの活動を行う中で感じている代替たんぱくの世界トレンドを3つの切り口で紹介していく。

トレンド(1)逆風にさらされる植物肉と、勢いを増す培養肉

 植物肉に関して、日本では米Beyond Meat(ビヨンドミート)とUSMH(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)が提携し、2022年11月から一部店舗で販売を始めるなど、明るい話題が増えている印象だ。改めて解説すると、植物肉とは大豆、小麦、ソラマメなどの植物由来の原材料で作る代替肉であり、SDGs(持続可能な開発目標)やビーガン(完全菜食主義者)のトレンドに乗って普及が進んできた。

Beyond Meatの植物肉パテを使ったハンバーガー。USMHはプライベートブランドの「Green Growers」から牛肉のミンチ風植物肉「BEYOND BEEF」を発売した(写真/Beyond Meat)
Beyond Meatの植物肉パテを使ったハンバーガー。USMHはプライベートブランドの「Green Growers」から牛肉のミンチ風植物肉「BEYOND BEEF」を発売した(写真/Beyond Meat)

 しかし、実は世界的な事業環境として追い風が吹いているとは言い難い。世界的な植物肉のプレーヤーとしてはBeyond Meatと米Impossible Foods(インポッシブルフーズ)の2社が有名だ。ところが、Beyond Meatの株価は2021年11月から22年11月にかけて8分の1程度まで下落し、時価総額で8億ドル(約1096億円)程度となっており、売り上げの減少や従業員のリストラなども報じられている。対するImpossible Foodsは未上場企業のため、今後IPO(新規株式公開)を目指すことになるが、21年11月に70億ドル(約9586億円)の時価総額で5億ドル(約685億円)の資金調達を行ったといわれており、競合の株価や業績が下落する中で順調にIPOプロセスを進められるかどうかは不透明である。

 このような植物肉プレーヤーの株価下落の背景として、植物肉に関する2つの懸念があると考えられる。

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