日本政策投資銀行(DBJ)子会社のベンチャーキャピタル、DBJキャピタルのメンバーが、注目ジャンルの新潮流を解説する連載の第1回。今回は、医療介護現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を促進しているベンチャー企業を取り上げる。

写真/Shutterstock
写真/Shutterstock
[画像のクリックで拡大表示]

 ヘルスケアと一言にまとめても、その範囲はかなり広い。治療に介入していく機器などを開発するベンチャー、ヘルスデータを分析するベンチャー、ウェルビーイング(心身の健康や幸福)に特化したベンチャーなど、ヘルスケアの中でも様々な分野で挑戦しているベンチャー企業が存在する。その中でも今回は、医療介護現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を促進しているベンチャー企業について取り上げたい。

 日本では、少子高齢化が大きな課題であることはニュースなどで報じられている通りである。具体的には、内閣府の発表によると、2019年10月1日時点での高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は28.4%であり、2025年は30%に達し、上昇を続けると推測されている。しかしながら、医療費や介護費は無限にあるわけではない。

 そのため、医療介護の質を維持・向上させつつ、医療費・介護費を削減していく必要性がある。これを達成するために、今後の方向性としては医療と介護を切り分け、限られた資源を適切に配分していくことが必要だろう。その目的達成のためには、医療・介護分野におけるDX化が必要不可欠だ。

 一方で、実際の医療・介護現場では、一概に「DX化いいですね。必要だし、すぐにやりましょう」とはなりにくいのが実態である。医療行為や介護の提供に際して(自由診療やサービス費を除き)、根本には診療報酬制度や介護報酬制度が存在し、加算や減算など制度の方向性で病院、介護施設の利益率や投資余力が左右されてしまうケースが多いからだ。

 そのため、DX化も含めた先行投資などに向ける資金があまりないケースが非常に多い。また、新しいシステムを導入するためには、一定の初期費用や利用料といった金銭的な費用に加えて、職員に対する導入研修や既存のマニュアル改定など、ただでさえ手いっぱいの介護現場の仕事にプラスアルファで「DX化」という新しい仕事が増えてしまうことになる。

 とはいえ、先述の通り、医療・介護の市場は広く、拡大基調である中で抱える課題も深いものがある。いわゆる「マストハブ」なシステムやサービスであれば、導入の検討余地や横展開の可能性は相応にあるだろう。本稿では、そのようなマストハブなサービスを提供しているベンチャー企業を紹介していきたい。

「医療介護現場DX」で注目のベンチャーとは

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。