ファンが他の人へ商品やサービスを推奨してくれるのは、どんなタイミングで、そのための必要条件は何か。ファンベースカンパニー(東京・渋谷)の研究機関「ファン総合研究所」の調査データから、ファンの心理や行動をひもとく連載の第5回では、引き続きファンの「推奨行動」について深掘りする。
企業やブランドの価値を支持してくれるファンを大切にし、そのファンと価値観を同じくする「類友」を巻き込んでいくことで、中長期的に売り上げや事業価値を高めていく「ファンベース」。では、すべての起点となる推奨行動、つまりファンが商品・サービスを人に薦める(薦められる)のはどんなときか。
ファンベースカンパニーの研究機関、ファン総合研究所が2022年8月に実施した「推奨行動に関する調査」を基にリポートした前回の記事 ▼関連記事:結局「誰」の推奨が響くのか 調査で判明、信頼されない広告の実態 で明らかになったのは、主に以下の3点だった。
(1)お薦めを信頼できる相手は専門家やインフルエンサーではなく、「友人や親しい人」「家族」
(2)お薦めされやすいのは、「コンビニ、スーパーの菓子など、『生活に身近なもの』」
(3)企業からの情報提供では、広告よりも「公式サイト・店頭」が信頼されている
今回はこの結果を受けて22年9月に追加で実施された第2弾調査を基に、ファンの推奨行動についてより深掘りしていく。
親しい人には「贈る」「一緒に体験する」
まず、第1弾調査では22カテゴリーを対象としたが、第2弾調査では「クルマ」「キッチン家電」「ダイエット食品・サプリメント」「アウトドアブランド」「ビール」「スーパーやコンビニなどの菓子」の6カテゴリーに絞っている。
前回調査で推奨行動が起こりやすかった生活に身近なカテゴリーに加え、「嗜好性が高いクルマなどの耐久消費財や、『コンプレックス商材』と呼ばれるダイエット関連に焦点を当てることで、それぞれの推奨行動を比較する狙い」(ファン総合研究所研究員の中村美幸氏)だ。調査対象は全国20~69歳の男女で、有効回答数は2400件。
まずは、どんな関係性で推奨行動が起こるのかをひもといていこう。第1弾調査で聞いた「『おすすめを信頼できる』と思える相手」の回答で、最も多かったのは「友人や親しい人」で全体の65.4%、続いて「家族」が60.7%だった。今回はその裏返しともなる「『誰に』おすすめをしたか?」を聞いた。
結果は下図の通りだ。「家族や親族」と答えた人が83%、「友人や親しい人」は88.8%、「知人や同僚」が73.4%。特に、前の2つが突出して高いスコアをたたき出した。ファンは親しい人に商品やサービスを積極的に薦めている実態が明らかとなるデータで、前回調査で分かる通り、薦められた側もその情報を信頼している。つまり、ファンの推奨行動は未来のファンを増やす機会であること、また「これまでファンベースカンパニーで提唱してきたように、『家庭内推奨』が起きていることが分かった」(中村氏)形だ。
一方で、ネットやSNSのフォロワー、不特定多数の人に対する口コミで薦めたと答える人は30%にも満たなかった。これも前回調査で「口コミやインフルエンサーのおすすめへの信頼度は低い」という結果の裏返しとなる。「SNSが盛んな昨今でも、『自分が気に入ったものを薦める』という行為は、オフラインで実際に親しい人に行っていることが分かる」と中村氏は話す。
では、なぜ親しい人に対しては推奨行動を取りやすいのか。第2弾調査の自由回答から見えてきたのは「贈る」「一緒に体験する」という動きだ。
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