正解のない難題と向き合うビジネスの現場で求められているのはクリエイティビティー(創造する力)――。デザインや広告キャンペーンなど表現領域をなりわいとしてきた広告クリエイターが、その活動領域を大きく広げつつある。本連載では、広告の枠を超え、独自の視点と発想でビジネス変革(BX=ビジネストランスフォーメーション)を推進する電通の「BXクリエイターズ」が、その流儀と手法を公開。第5回のテーマはR&D(研究開発)だ。
ビジネスにおいて領域の境目がなくなり、不確実性が高まり、企業のR&Dも新たな課題に直面している。そうした中で、ドリームインキュベータ(DI)と電通は、クリエイティブ視点を活用したR&D変革推進サービス「R&Dトランスフォーメーション」を提供している。本記事ではDI執行役員の田代雅明氏と電通BXクリエーティブ・センターの後藤一臣氏にその背景と、これからのR&Dとクリエイティビティーの意外な関係について聞く。
R&Dの多様化で生まれた新たな課題
――昨今、企業がイノベーションを目指す中で、R&Dに求めるものも変わってきているかと思います。R&Dには今、どのような課題があるのでしょうか?
田代雅明氏(以下、田代) R&Dの対象領域が多様化していることで様々な課題が生まれています。たとえば自動車会社であれば、昔はエンジンやサスペンションといったメカニクスが主なR&Dの対象でしたが、現在はエレクトロニクス領域やソフトウエア領域はもちろん、ビッグデータやAI(人工知能)に至るまで、やらなくてはいけない領域がどんどん増えています。
結果、1社でカバーすることが非常に困難になっている状況です。そうした中で、自分たちはR&Dのフォーカスをどこに置くのか決めることが必要になってきています。また他社との協業が進む中で、自分たちが目指している社会はどうであるとか、そういう世界になったときに、自分たちはどういう存在でありたいのかなど、より大きな構想を世の中に出していく必要も生まれています。
後藤一臣氏(以下、後藤) R&Dのビジョンということですね。
田代 はい。ただ一方で、このビジョンが明確に描けていないことも多くあります。R&Dが総花的になってしまう理由の一つもここにあると思います。
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