正解のない難題と向き合うビジネスの現場で求められているのはクリエイティビティー(創造する力)――。デザインや広告キャンペーンなど表現領域をなりわいとしてきた広告クリエイターが、その活動領域を大きく広げつつある。本連載では、広告の枠を超え、独自の視点と発想でビジネス変革(BX=ビジネストランスフォーメーション)を推進する電通の「BXクリエイターズ」が、その流儀と手法を公開。第5回のテーマはR&D(研究開発)だ。

エレクトロニクスやソフトウエアはもちろん、ビッグデータやAI(人工知能)とR&Dに求められる領域は従来よりも広くなっている(イラスト/Shutterstock)
エレクトロニクスやソフトウエアはもちろん、ビッグデータやAI(人工知能)とR&Dに求められる領域は従来よりも広くなっている(イラスト/Shutterstock)

 ビジネスにおいて領域の境目がなくなり、不確実性が高まり、企業のR&Dも新たな課題に直面している。そうした中で、ドリームインキュベータ(DI)と電通は、クリエイティブ視点を活用したR&D変革推進サービス「R&Dトランスフォーメーション」を提供している。本記事ではDI執行役員の田代雅明氏と電通BXクリエーティブ・センターの後藤一臣氏にその背景と、これからのR&Dとクリエイティビティーの意外な関係について聞く。

田代雅明氏。ドリームインキュベータ執行役員。10年以上にわたり、自動車、IT/通信、エネルギー、エレクトロニクス、化学/素材、ヘルスケアなどの業界におけるビジネスプロデュースに携わると共に、成長戦略立案や研究開発成果の事業化、組織改革/新組織設立と幅広い領域に関する戦略コンサルティングプロジェクトに従事。近年は新規事業を継続的に生み出すための仕組み作りや組織設計の支援にも注力
田代雅明氏。ドリームインキュベータ執行役員。10年以上にわたり、自動車、IT/通信、エネルギー、エレクトロニクス、化学/素材、ヘルスケアなどの業界におけるビジネスプロデュースに携わると共に、成長戦略立案や研究開発成果の事業化、組織改革/新組織設立と幅広い領域に関する戦略コンサルティングプロジェクトに従事。近年は新規事業を継続的に生み出すための仕組み作りや組織設計の支援にも注力
<今回のBXクリエイター>後藤一臣氏。電通BXクリエーティブ・センター GM。マーケティング、クリエイティブ、デジタルクリエイティブ、プロモーションなどの部署を経て、BXクリエーティブ・センター所属。企業のビジネス課題に対する最適解をワンストップ&ニュートラルに発想。クリエイティビティ―の広告以外への応用を志向する。カンヌGOLD、アドフェストグランプリ、グッドデザイン賞などを受賞。経営学修士(MBA)
<今回のBXクリエイター>後藤一臣氏。電通BXクリエーティブ・センター GM。マーケティング、クリエイティブ、デジタルクリエイティブ、プロモーションなどの部署を経て、BXクリエーティブ・センター所属。企業のビジネス課題に対する最適解をワンストップ&ニュートラルに発想。クリエイティビティ―の広告以外への応用を志向する。カンヌGOLD、アドフェストグランプリ、グッドデザイン賞などを受賞。経営学修士(MBA)

R&Dの多様化で生まれた新たな課題

――昨今、企業がイノベーションを目指す中で、R&Dに求めるものも変わってきているかと思います。R&Dには今、どのような課題があるのでしょうか?

田代雅明氏(以下、田代) R&Dの対象領域が多様化していることで様々な課題が生まれています。たとえば自動車会社であれば、昔はエンジンやサスペンションといったメカニクスが主なR&Dの対象でしたが、現在はエレクトロニクス領域やソフトウエア領域はもちろん、ビッグデータやAI(人工知能)に至るまで、やらなくてはいけない領域がどんどん増えています。

 結果、1社でカバーすることが非常に困難になっている状況です。そうした中で、自分たちはR&Dのフォーカスをどこに置くのか決めることが必要になってきています。また他社との協業が進む中で、自分たちが目指している社会はどうであるとか、そういう世界になったときに、自分たちはどういう存在でありたいのかなど、より大きな構想を世の中に出していく必要も生まれています。

田代氏は、R&Dの課題の根底には対象領域の多角化があるという
田代氏は、R&Dの課題の根底には対象領域の多角化があるという

後藤一臣氏(以下、後藤) R&Dのビジョンということですね。

田代 はい。ただ一方で、このビジョンが明確に描けていないことも多くあります。R&Dが総花的になってしまう理由の一つもここにあると思います。

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