正解のない難題と向き合うビジネスの現場で求められているのはクリエイティビティー(創造する力)――。デザインや広告キャンペーンなど表現領域をなりわいとしてきた広告クリエイターが、その活動領域を大きく広げつつある。本連載では、広告の枠を越え、独自の視点と発想でビジネス変革(BX=ビジネストランスフォーメーション)を推進する電通の「BXクリエイターズ」が、その流儀と手法を公開する。第3回のテーマは、社会課題解決に新たな価値を生み出そうとするクリエイティビティーの新活用論だ。
今ビジネスをする上で、無視することのできない「サステナビリティー(持続可能性)」と「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、多様性・公平性&包括性)」。全ての企業が待ったなしで取り組まなければならないテーマだが、どんな打ち手で、どう始めたらいいかは簡単に答えの出ない問題だ。
電通BXクリエーティブ・センターの堀田峰布子氏は、この2大テーマをクリエイティブ思考でつなげ、これまで以上の効果を生み出そうとする取り組みに挑んでいる。題して「で、おわらせないPROJECT」。第1弾として、オフィスで使わなくなったプラスチック製品から、初心者でも名刺に点字を書くことができる名刺用凸面点字器「ten・ten」を開発した。堀田氏に、創造的な社会課題解決と、クリエイティビティーがもたらす価値について聞く。
目の前のことだけ「で、おわらせない」
――ユニークなネーミングの「で、おわらせないPROJECT」とは、どのような取り組みですか?
堀田峰布子氏(以下、堀田) “環境に配慮しつつ、モノにアイデアを加え、あたらしい価値を生む”“みんなが参加できる仕組みをつくり、より良い循環を生む”という考えのもと、継続的に取り組めるアップサイクル(元のものより価値を高めるリサイクルのこと)のプラットフォームとして誕生したプロジェクトです。再利用できる資源を使いながら、社会課題に対応するプロダクトを企画・開発しています。
「で、おわらせないPROJECT」というネーミングには、リサイクルという意味だけでなく、この活動を考えることやできること、そして目の前のことだけ“で、おわらせない”というアイデアと意志が込められています。第1弾では、2022年の4月からいわゆるプラスチック新法(プラスチック資源循環促進法)が施行されたことを受け、オフィスで使わなくなったプラスチック製品に着目しました。
使用期限を迎えたプラスチック製ヘルメットを名刺専用の自分で書ける点字器に、クリアファイルをケースへとアップサイクルさせました。この名刺用凸面点字器「ten・ten」は、22年度グッドデザイン賞を受賞することができました。
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