正解のない難題と向き合うビジネスの現場で求められているのはクリエイティビティー(創造する力)――。デザインや広告キャンペーンなど表現領域をなりわいとしてきた広告クリエイターが、その活動領域を大きく広げつつある。本連載では、広告の枠を越え、独自の視点と発想でビジネス変革(BX=ビジネストランスフォーメーション)を推進する電通の「BXクリエイターズ」が、その流儀と手法を公開する。第1回のテーマは、人が持つ妄想の力を活用した未来創造だ。
未来が不確実であるからこそ、目指すべき未来を描き、そこから逆算して航路を見いだす。未知の領域へこぎ出す羅針盤として必要なのは「妄想」なのかもしれない。電通のクリエイター榊良祐氏は、そんな「ビジョンドリブン型」の思考法を提案するプログラム「Future Vision Studio」を主催している。どうすれば妄想の持つ可能性を高め、未来の解像度を上げられるのか。プログラムを体験したサントリーの神尾英俊氏と、BXクリエイターズの榊氏の対談をお届けする。
未来は妄想からつくられる
榊 良祐氏(以下、榊) 未来予測が困難なVUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代、正しく「妄想」することの重要性が高まっています。僕のところに寄せられる様々な課題に対して、未来を妄想するスキルを身に付けられるようにフレーム化したのが「妄想ドリブン型プログラム」です。ただの発想法ではなく、妄想を起点に、いかに未来を実現できるかを広告クリエイティブのアプローチで考案したものです。今回サントリーさんにはこちらに取り組んでいただきました。
神尾英俊氏(以下、神尾) 当時、私は新規ブランドのデジタル支援業務で、新しい価値をお客様に提供したいと考えていましたが、これまでの課題解決型の方法では難しいと感じていました。でも、いざ新しいことをと思っても、どうしたらいいか全然分からず。そんなときに、榊さんをご紹介いただいたことがきっかけです。
広告クリエイティブのスキルが妄想力を加速
榊 僕らクリエイティブ職の人間は一番わくわくするものや、人が話題にして伝えたくなることはなにかを常に考えています。妄想ですよね。だから、先が読めない時代にわくわくするビジョンをつくるっていうのは得意なんです。
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