これから伸びる領域は何か? 注目のビジネス領域やスタートアップ企業をVC(ベンチャーキャピタル)が解説する本連載。第5回は、IT関連を中心に、国内外の有望なスタートアップに投資するサイバーエージェント・キャピタル(東京・渋谷)の社長、近藤裕文氏に聞いた。
サイバーエージェント・キャピタル 社長
サイバーエージェント 執行役員
社会の課題解決に注力するスタートアップが躍進
――スタートアップ業界で注目している動きは。
近藤裕文氏(以下、近藤) 世の中の関心は今、米OpenAIのChatGPTの話題で持ちきりです。ググるの次の世界を提示し、個人にとっては間違いなく有用なサービスになります。また、企業にとっても実際に私たちの投資先や日本のスタートアップでも、ChatGPTと連携したサービスや事業が出てきており、これは注目すべきテーマではあります。
一方で、今日本で目立ってきているのが、「社会起業家」という存在がスタンダードになってきたということです。その例が、ペットフードを人間が食べるものと同じ新鮮な肉や魚、野菜を使って保存料無添加でつくり、冷凍して家庭に届ける「PETOKOTO FOODS」というサービスを展開するPETOKOTO(ペトコト、東京・新宿)です。社長の大久保泰介氏は、ペットを家族として見て、健康的かつ寿命が長く生きられるような社会をつくりたいという思いがあり、ペットを幸せに暮らせる環境へと解き放つことをミッションに事業を展開しています。
――少し前だとこうした社会起業家への見方は厳しく、産業として継続できるのか、収益性はどうかと疑いの目で見られることも多かったと思います。
近藤 実際、PETOKOTOも「人が動物と共に生きる社会をつくる」というテーマがあまりにも壮大で、経済性が疑問視されていた時代があったことは事実です。私たちは初期の頃から投資をしていましたが、続く資金調達が伸びず、苦労していた時期もあります。
しかし、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境、社会、ガバナンス)投資が日本でも浸透していく中で、潮目が変わってきました。ペットフードの改善だけでなく、ペットの正しい情報を発信するキュレーションメディアの運営や保護犬猫と飼い主をマッチングさせるサービスの提供など、社会起業家としての活動に投資家が改めて注目し、共感が高まっていると感じられます。
――社会起業家やESGが応援され、経済性も付いてくる世の中になっている。
近藤 はい。「サブスクライフ」という家具や家電の月額制サブスクリプション・レンタルサービスを提供するソーシャルインテリア(東京・港)も、SDGsやESGの観点から伸びている企業のひとつです。コロナ禍でリモートワークが広がる中、オフィスは機能やサイズが再定義されています。オフィスはコンパクトにしながら、社員が会社にいる時間を有意義にするため、良いデザイン・機能の家具を初期コストを下げて導入する需要が高まり、そこにサブスクライフのサービスがマッチして伸長しているのです。
ポイントは、同社がユーザーにはサブスクといういわば“分割払い”の形態で家具などを提供しながら、メーカーからは一括払いで購入し、キャッシュのギャップを自分たちが持っていること。新たな需要につなげ、SDGs的な視点で見れば持続的なものづくりの環境を支えることにつながっているといえます。
さらに、次の一手として始めた、ブランド家具・家電の2次流通マーケットプレイス「サブスクライフ オフプライス」も注目しています。メーカーの遊休在庫や法人のリユース品の出品が可能で、従来廃棄されてきた製品が「中古品でいいから安く買いたい」という新たなユーザーの下で再び息を吹き返すことができています。
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