フード(食)テックやフィン(金融)テック、インシュア(保険)テックでは、従来見られなかったような新たな動きが広がり、2023年にはさらに加速しようとしている。注目のスタートアップやトレンドをVC(ベンチャーキャピタル)などの支援企業が解説する本連載。第2回はスタートアップと大手の共創を生み出すPlug and Play Japan(東京・渋谷)に聞いた

相馬 由健氏(左)
Plug and Play Japan Food & Beverageプログラムリード/ベンチャーズアナリスト
東北大学大学院工学研究科で修士号取得。野村総合研究所の経営コンサルタントとしてキャリアをスタートし、官民の農食事業、宇宙事業やスタートアップ・エコシステムに関するプロジェクトに従事。Plug and Play JapanではVenturesメンバーとしての投資、Food&Beverageプログラムにおけるコーポレートイノベーション支援の両軸で活動

李 暢氏(中央)
Plug and Play Japan Fintech/Insurtechディレクター
中国・四川生まれ、立命館アジア太平洋大学卒業後、2012年に新卒で大手生保会社に入社し、東京やニューヨークで資産運用、M&A業務に従事。香港大学でMBA取得後、18年12月に Plug and Play Japanへ入社。日本のInsurtechエコシステムづくりに励み、P2P保険プラットフォームのスタートアップへの投資を担当。一般社団法人 Femtech Community Japan 理事、一般社団法人Fintech協会理事

荒井 良史彦氏(右)
Plug and Play Japan Fintechプログラムリード
早稲田大学法学部卒業後、2013年に三井住友銀行入行。2年間の国内法人営業の後、国際部門に異動。19年に同行を退職し、米国Babson College MBAプログラムに留学。起業論・ベンチャー経営戦略などの履修と並行し、アクセラレータクラブの設立、VC企業でのエクイティ投資、地場中小企業のコンサル支援などを経験。21年よりPlug and Play Japanに参画。Fintech領域の実務統括として、主に国内外スタートアップと金融機関連携を支援する

日本伝統の米麹(こうじ)で砂糖代替市場に切り込むフードテック企業

――生活にも直結する食は注目度の高い業界だと思います。特に、昨今ではフードテックの話題が多いです。2022年から23年にかけて、盛り上がりを見せそうなテーマは。

相馬 由健氏(以下、相馬) 近年、完全栄養食の「BASE FOOD(ベースフード)」、低糖質・低塩分の冷凍宅配弁当「nosh(ナッシュ)」などが人気を集め、こうした食のD2Cブランドが国内でも盛り上がっています。海外では先にフードテックのD2Cブランドが数多く立ち上がっており、日本はそのトレンドを追いかけているような状況です。

 そんな中、海外で次に巻き起こっているのが“ingredients innovation”であり、訳すと「原料の革新」です。少し前までは代替肉といえば、大豆などを原料とした植物肉がメインでしたが、今や海外では関心が「培養肉」に移り、対象は牛肉にとどまらず、シンガポールではシーフードの培養を行うShiok Meats(シオクミーツ)といったスタートアップも登場。培養エビは上市が近いとされています。その一方で、代替たんぱく質や代替砂糖など、原料そのものを他の物質に置き換えるような動きも活発になっています。

 最近バズワードになっている、微生物によって代替たんぱく質などを製造する「精密発酵」も、その流れから生まれた新しい技術です。日本でも、D2Cブランドのブームが海外から来たのと同じように、今後はこうした原料の革新が新潮流として食の業界を席巻するとみています。

――原料の革新でいうと、国内で具体例はありますか。

相馬 既存の砂糖とは異なる甘味料をつくっているオリゼ(東京・品川)に注目しています。同社が着目したのが、味噌やしょうゆの原料である米麹(こうじ)が持つ自然な甘味です。

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