※日経エンタテインメント! 2022年11月号の記事を再構成
2010年のスタート以来、多くの人気スクールアイドルグループを生み出してきたラブライブ!シリーズ。これまでは、各シリーズの物語のスタート時は、1~3年生の1学年3人ずつ計9人のメンバー構成だった。一方、20年に4作目としてスタートした『ラブライブ!スーパースター!!』は、舞台となる「結ヶ丘女子高等学校」が新設校という設定。グループの初期メンバー全員が高校1年生で、スタート時はメンバー総数が5人、作中にはメンバーが進級する描写があるなど、シリーズ初となる要素が数多く盛り込まれていた。そして22年4月、メンバーの進級に合わせ、新入生という立場で追加メンバー4人の加入が発表。これまでになかった展開を見せつつも既存シリーズ同様、9人での活動がスタートした。
この変化についてキャスト自身はどのように感じているのだろうか。本作に登場するスクールアイドルグループLiella!(リエラ)から1期生の伊達さゆり(澁谷かのん役)、岬なこ(嵐千砂都役)、2期生の鈴原希実(桜小路きな子役)、薮島朱音(米女メイ役)に率直な心境を聞いた。
澁谷かのん
2年生。Liella!の中心人物。歌の才能はあるものの、人前で歌うことが苦手だったが、Liella!の活動を通して克服。TVアニメ2期では、自身の経験を踏まえ、1年生の良き理解者であり相談相手として活躍するなど大きく成長した
嵐 千砂都
2年生。かのんとは幼なじみ。ダンスが得意でグループ内では振り付け担当を務めている。自身はグループ内でもサポート役だと思い込んでいたが、TVアニメ2期第4話でかのんの後押しもあり、スクールアイドル部の部長へ就任
桜小路きな子
1年生。結ヶ丘女子高等学校に入学するため、北海道から上京。幼少期から体力がなく、スクールアイドルに興味は持ちつつも向いていないと思っていたが、先輩たちの優しさや同級生たちが背中を押したことで入部を決意
米女メイ
1年生。アイドル好きで、入学時からLiella!をマークしていた。自分の容姿をあまり良く思っていないため、入部には消極的だった。中学の同級生である若菜四季の説得の末、スクールアイドル部に入部した
新メンバー追加の率直な思い
――メンバーが増えると知った時、1期生はどう感じました?
岬なこ(以下、岬) オーディションで合格をいただいた時に、メンバーが増えると聞いていたのですが、自分のことでも精いっぱいなのに受け入れる側として大丈夫なんだろうかと正直不安を感じていました。2期生にとっても、1年間活動してきた1期生の中に途中で加入することは、とてつもないプレッシャーだろうし。もちろん楽しみではあったけど、ほとんどのメンバーは不安な気持ちがあったと思います。でも、さゆりん(伊達)だけは不安を口にせず「楽しみ!」と言っていて(笑)。すごく頼もしかったです。
伊達さゆり(以下、伊達) 純粋にすごく楽しみでした。もちろん緊張もありましたけど、「メンバーが増えることがうれしい!」「どんな子たちなんだろう?」「Liella!はこれからどうなっていくのかな?」ってワクワクしていました。その時は自分が先輩になることへの実感があまりなかったというのもありますね(笑)。
――2期生のお2人は途中加入についてどう感じていましたか?
鈴原希実(以下、鈴原) 私は2020年に行われた一般公募オーディションのとき、2期生として合格していて、1期生のみなさんが発表された時点で加入が決まっていました。1期生のみなさんはメンバーが増えることを知らないと思っていたから、私だけ大きな秘密を抱えている気持ちになっていて。初めの頃は1人で闇雲に練習していましたね。
薮島朱音(以下、薮島) メンバー4人が2期生として決まった後、希実と私はすごく大きな不安を抱えていました。この2人以外のほかの2期生(大熊和奏、絵森彩)は「よし! やってやる!」という感じだったのに、私たちはすごくネガティブで。レッスンのたびにどちらかが泣いて、2期生メンバーたちに慰めてもらっていました(笑)。
伊達・岬 えぇ! そうだったの? 初めて聞いた(笑)。
アフレコも徐々に和やかに
メンバー9人で行動するようになったのは、TVアニメ2期の放送開始直前からだったという。コロナ禍により、アフレコも基本的には1期生、2期生と分かれての分散収録が多かった。2期生においては、アフレコ未経験のメンバーもおり、当初は緊張のあまり口数も多くなかったという。
――7月から放送のTVアニメ2期のアフレコはいかがでしたか?
鈴原 私が担当する(桜小路)きな子ちゃんは、1年生の中でも最初にグループへ加入する子だったので、最初は2年生の中に入って一緒に録っていました。まだあまりお話ししたことのない先輩たちのなかでいきなりアフレコをすることになって、どうすればいいんだろう?という気持ちが最初は大きかったです。
岬 のんちゃん(鈴原)は、台本を持ってアフレコブースの壁に向かって同じセリフを繰り返し練習していた記憶がある(笑)。
鈴原 そうですね(笑)。でも、徐々にコミュニケーションをとる余裕も生まれて、和やかな雰囲気で進められたと感じています。
伊達 私は私で、担当する(澁谷)かのんちゃんが2期生メンバーと会話するシーンが多かったから、1期生とのアフレコ前に2期生の4人のなかに入ってアフレコしたんですよ。その時は私が壁を向いて、ずっと台本を見ていたような記憶が(笑)。『ラブライブ!スーパースター!!』のTVアニメのアフレコは1年ぶりだし、新たなメンバーの声やトーンも分からないし、「こういう感じの声ね」とひたすらメモを取っていました。
鈴原 さゆちゃん(伊達)と2期生が初めて一緒にアフレコをした時、隣のマイクだったんですけど全然目が合わなくて(笑)。それほど、すごく集中していらっしゃいました。職人みたいで、すごくカッコいいなって!
伊達 そう言っていただけるとすごくうれしいのですが、声を掛けるべきなのに自分のことで手いっぱいになってしまったので、余裕を持ちたいなと思いました(笑)。
薮島 2期生も初めは、アフレコ中のときは控室で誰もしゃべらなかったんですよ。2期生って普段はすごくわちゃわちゃしているのですが、アフレコ中はみんな真剣で「こんな雰囲気になるんだ」と感じるほど。アフレコに慣れていなかったから、それぞれいろんなことを考えながら探り探りだったのだと思います。
岬 私たち1期生も担当するメンバーが先輩になったことで、これまでとは異なるプレッシャーを感じていたよね。劇中の1期生の5人も私たちが見ていないところで、1年を通してお互いの絆を強くしてきたと思うから、そんな彼女たちの気持ちにどう寄り添っていけばいいのだろうかと悩みましたね。
2期生加入でよりリアルに
TVアニメ2期では、初めての後輩たちに戸惑う2年生の姿や先輩たちとの実力の差に悩む1年生の姿が描かれている。メンバーとキャストの心情が重なり、キャスト自身アフレコに熱が入ったことで、これまでにないリアルさを生んだ。そこへ、従来のシリーズを“継承”する「9人でラブライブ! を目指す」という要素が加わり、ラブライブ!シリーズらしさも感じられる物語になった。
――TVアニメ2期の魅力とは?
鈴原 かのんちゃんたちが進級して私たち新入生が入学することで、メンバー同士の関係性はもちろんメンバー自身の変化が感じられるところだと思います。例えば、かのんちゃんはTVアニメ1期の時、「守ってあげたい子だな」と思っていたけど、2期ではすごく頼もしい存在になりました。新しい魅力がどんどん増えていると感じています。
伊達 私も、2期生がいてこその魅力があると感じています。正直TVアニメ1期の時は、学生時代に先輩がいない経験がなかったから、新設校で上級生がいないという感覚をイマイチつかめずにいました。だけど、2期生が入ってきてくれたことで、後輩がいた時の経験を思い出せるようになって。2期生が入ってくれたことで、よりリアルなお話がつくれているなと実感がありますね。
岬 TVアニメ2期はこれまで以上に“夢”がキーワードになっていると思っていて。夢があるのに挫折を味わってしまった子、夢とは何だろうと思っている子、夢に追いつこうともがく子…より1人ひとりの個性が光るお話になったと思います。見てくださる方にとっては、誰かしらのメンバーに共感できるんじゃないかなって。それがTVアニメ2期の魅力だと思います。
――岬さんが担当する千砂都はスクールアイドル部の部長になりました。キャストの中でも部長としての立ち振る舞いを?
岬 私は一歩引いて見守っています(笑)。私自身、ちぃちゃん(嵐 千砂都)が部長になるなんて予想していなかったんですよ。いつも彼女の成長や決断の速さに驚かされるばかりです。
薮島 なこちゃんは率先して2期生に話しかけてくれるんですよ。
岬 いやいや…! 私が学生時代に後輩の立場だったとき、すごく積極的に話しかけてくれる先輩がいて助けられたから、同じようにしたくて。それにささいなところからでも少しずつ緊張がほぐれていけば、きっとパフォーマンスもトークももっと良い方向に作用するだろうと考えているだけなんです。私はちぃちゃんに尊敬の念を持っているほど、まだまだ及んでいないと思っているので、部長なんて恐れ多いですよ。Liella!を取りまとめているのはさゆりんじゃないかな。
伊達 それはかのんちゃんが1年生と率先して話したり、みんなの中心になって行動したりするから同じようにしているだけなんです。かのんちゃんを担当していなければ、絶対にやらないし、向いていない(笑)。
鈴原 1期生の先輩たちは、担当するメンバーと同じように、それぞれの分野にたけているから、「この相談はこの人に」と、それぞれ頼りになるところがあるなと感じていて。
薮島 うん。5人それぞれに相談したいと思うことがあって、1期生のみなさんにとても助けてもらっています。
(後編へ続く)