2022年11月4日発売の「日経トレンディ2022年12月号」 ▼Amazonで購入する では、特集「シン・ヒーロー作品徹底研究」を掲載、ウルトラマンと仮面ライダーが揃って表紙を飾る「特別表紙版」も発売中。庵野秀明氏の参加する映画作品プロジェクトに冠されてきた「シン」。日本の特撮やアニメ作品の魅力を再生させてきたシリーズの最新作『シン・仮面ライダー』が、2023年3月に公開される。制作関係者への取材を基に「ヒットの芽」を読み解いていく。

※日経トレンディ2022年12月号より。詳しくは本誌参照

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仮面ライダーとウルトラマンが表紙の「特別表紙版」も発売中
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 2016年公開の『シン・ゴジラ』以降、庵野秀明氏の参加する映画作品プロジェクトに冠されてきた「シン」。そこに込められた意味は明らかにされてはいないが、日本の特撮やアニメ作品の魅力を、時代を超えて大きなスケールで再生させ、コアなファンにとどまらず多くの観客の心をつかみヒット作を生み出してきた。

 その「シン」シリーズの最新作『シン・仮面ライダー』が、23年3月に公開される。ベースとなるのは石ノ森章太郎の漫画『仮面ライダー』と、1971年放送のテレビシリーズ第1作目の「仮面ライダー」だ。公となった情報はまだ多くはないが、71年版からどのように“変身”して観客の前に姿を現すのか、制作背景の中にある「ヒットの芽」を探りながら読み解いていきたい。

 第一に『シン・仮面ライダー』で注目すべき点は、本作が庵野監督による『シン・ゴジラ』以来、約7年ぶりの実写監督作品だということだ。プロデューサーの小出大樹氏(東映・映画企画部)は本作について、「庵野監督の原動力は『仮面ライダー』が好き、というシンプルで強い思い。しかもその『好き』のレベルが尋常ではない。その思いを中心に、熱い心や考えを持つ人たちが、年齢や立場にとらわれず作品を作り上げていこうという空気がある」と制作現場の雰囲気を語る。

本郷猛(仮面ライダー)に池松壮亮、ヒロインの緑川ルリ子に浜辺美波、一文字隼人(仮面ライダー第2号)に柄本佑と若手実力派キャストを起用
本郷猛(仮面ライダー)に池松壮亮、ヒロインの緑川ルリ子に浜辺美波、一文字隼人(仮面ライダー第2号)に柄本佑と若手実力派キャストを起用
マスクやスーツは、71年のTVシリーズ版のイメージを踏襲しつつ細部まで作り込んだ造形
マスクやスーツは、71年のTVシリーズ版のイメージを踏襲しつつ細部まで作り込んだ造形

 宣伝を担当する湯口隆明氏(東映・宣伝部)は、特に手応えを感じたのが、22年5月に公開した本編映像を初めて使用した特報だったという。「静かにカットを積み重ねた特報ではあったが、絞り込まれた情報の中から、作品の空気感や庵野監督の作家性がしっかりと伝わった」(湯口氏)。SNSでは「“エヴァみ”を感じる」など、実写以外の庵野秀明作品に親しんできた層からも反響を集めた。

22年5月に公開された特報映像では、アイコニックな線路の場面がファンの間で話題に
22年5月に公開された特報映像では、アイコニックな線路の場面が庵野作品ファンの間で話題に

 他の「シン」シリーズと同様に、本作でも原点となる作品へのリスペクトは映画制作の軸となっている。その姿勢をユニークな形で見せたのが、当時のオープニングを『シン・仮面ライダー』バージョンとして再現したプロモーション映像だ。細部までしっかりと再現されていることで、スーツやバイク「サイクロン号」の新たなデザインが目を引いた。

 「走行中の背景は今の技術ならCGで作成可能だが、あえて描かれた背景を筒状にしてモーターで回転させる『回転バック』という当時の特撮技術を再現して撮影した」(小出氏)。映像は71年版や特撮ファンも確実に楽しめる作品だというメッセージであると同時に、クランクインの前に一度原点に立ち戻ることで、何を新しく生み出せるのか可能性を探る試みでもあったという。

21年9月に公開されたプロモーション映像では、71年版第1話オープニング映像を『シン・仮面ライダー』版として再現。それをベースに新しい表現を加えたバージョンも発表された
21年9月に公開されたプロモーション映像では、71年版第1話オープニング映像を『シン・仮面ライダー』版として再現。それをベースに新しい表現を加えたバージョンも発表された

 その映像が公開された21年9月の「シン・仮面ライダー対庵野秀明展」の記者会見では、本郷猛(仮面ライダー)役の池松壮亮、緑川ルリ子役の浜辺美波の2人、22年1月には一文字隼人(仮面ライダー第2号)役に柄本佑が発表。実力派の俳優を起用するキャスティングにも注目が集まった。

 主役の本郷猛役といえば藤岡弘、という71年版の確固としたイメージがある中、同じ役名を使うからには、別の魅力を持った本郷像をしっかりと見せられる俳優を探していたという。「その中で池松壮亮さんの佇まいや声の良さ、企画にかける思いの強さに、彼となら新しい本郷を一緒につくっていけると監督、プロデューサー含め全員一致で確信が持てた」(小出氏)

 浜辺美波については「作品が求めるヒロイン像の模索にやや行き詰まっていた時期に、庵野監督が会社の壁に掛けてあった東宝のタレントカレンダーの写真で浜辺さんを見て、目を引かれたのがきっかけ」(小出氏)。第一印象を裏切らない適役ぶりに、すぐにオファーが決まったという。

 仮面ライダー1号役に池松壮亮が決定後、隣に並び立ったときのバランス感を重視して第2号役を探した。「柄本佑さんの持つ、池松さんとはまた異なる独特の空気感やキャラクターがぴたりとはまった」(小出氏)

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