2022年11月4日発売の「日経トレンディ2022年12月号」 ▼Amazonで購入する では、特集「シン・ヒーロー作品徹底研究」を掲載し、シン・ウルトラマンとシン・仮面ライダーが揃って表紙を飾る「特別表紙版」も発売中。2022年5月13日に公開された映画『シン・ウルトラマン』は、公開以降、興行収入44億円を記録。シリーズへのオマージュを散りばめながら、巨大ヒーローを現代劇として秀逸に描き、3世代を巻き込んだブームを作り出した。

※日経トレンディ2022年12月号より。詳しくは本誌参照

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 「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」。劇中のこの台詞は多くの人の記憶に刻まれた。1966年放送の初代テレビシリーズから56年を経て誕生した新たな「ウルトラマン」。劇的な“リブート”はどのようになされたのか、その背景に迫る。

(c)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)️円谷プロ
(c)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)️円谷プロ

 2022年5月13日に公開された映画『シン・ウルトラマン』は、公開以降、興行収入44億円を記録。現在も全世界で順次公開されている。関連グッズも、作中に登場する変身アイテムの大人向け玩具「ウルトラレプリカ ベーターカプセル(シン・ウルトラマン)」(バンダイ)が、6月に受注を開始すると即完売するなど軒並みヒットした。

 「初代」を見ていた世代から、平成の「ウルトラマン」シリーズに親しんだ若い世代、さらに初見の子供たちまで、『シン・ウルトラマン』はシリーズへのオマージュを散りばめながら、巨大ヒーローを現代劇として秀逸に描き、3世代を巻き込んだブームを作り出した。

 特撮作品に詳しい映画評論家の清水節氏は「もともと『ウルトラマン』シリーズは、社会的なメッセージを盛り込んだ大人も楽しめる作品。今回もヒーローものとして子供も楽しめるよう間口を広く作りながら、多彩な考察やオマージュを探す“余地”を多分に盛り込み、コアなファンも満足させた」と語る。

 初代「ウルトラマン」を現代に復活させるうえで、特に重要な役割を果たしたのが、SF的な緻密さや、主人公たちを取り巻く社会のリアリティだ。例えば、「初代」の主人公たちは、作中では「科学特捜隊(科特隊)」と呼ばれる国際科学警察機構に属している。近未来を思わせる夢があったが、細部の設定にはあいまいな部分もあった。

 一方の本作では、斎藤工扮する主人公の神永新二は、出現が相次ぐ禍威獣(カイジュウ)による災害対策を講じる防災庁の専従組織である「禍威獣特設対策室」、通称「禍特対(カトクタイ)」に所属するという設定。正体不明の巨人や巨大生物への対策過程を政治的判断も含めて緻密に描き、大人が見ても飽きないリアリティを担保した。

(c)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)️円谷プロ
巨大不明生物「禍威獣(カイジュウ)」に対応する組織の現実味を追求。(c)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)️円谷プロ

 こうした現実味を重視する路線は、16年の『シン・ゴジラ』でも大きな支持を集めたが、『シン・ウルトラマン』では他方で、巨大ヒーローが怪獣を倒すという“ロマン”も作品の柱としている。「冒頭、『シン・ゴジラ』のタイトルを突き破って始まるが、『ウルトラQ』のタイトルを突き破って始まった『初代』へのオマージュであると同時に、ポリティカルサスペンス的な『シン・ゴジラ』を突き抜け、より空想とロマンを感じさせるSFファンタジーなのだと示唆しているのではないか」(清水氏)

 また、劇場に何度も足を運ぶリピーターの存在も興行収入を大きく押し上げた。「『初代』を知らなくても全く問題なく楽しめる作りでありつつ、コアなファンがうれしくなる仕掛けを違和感なく潜ませている」(清水氏)。例えばファンが見れば、冒頭の戦闘シーンなどは、ウルトラマンの動きが「初代」のスーツアクターである古谷敏氏の動きをリスペクトしたものだと分かるという。主人公の対戦相手となる禍威獣のネロンガ、ガボラは同属を思わせる設定で語られており、姿も似ている。制作上この2体はCGのデータを“流用”して描いているが、これは「初代」で登場した同名の怪獣たちが、実は同じスーツを再利用して作られた裏事情を踏襲したものだ。ファンはこうした「トリビア」にも夢中になった。

 「公開から3週間後に初代『ウルトラマン』の4K上映会が行われた。客層は20代、30代が多く、従来の『初代』のファンよりも若い層が足を運んでいた。“原点”を見ることで、より深く楽しみたいという熱量を感じた」(清水氏)

 そして、俳優たちの好演も本作のヒットを語るうえで欠かせない。主人公を演じた斎藤工、メフィラスを演じた山本耕史は、見た目は人間だが中身は外星人という役柄を見事に表現。言葉は丁寧だが飄々としてどこか俗世離れしたおかしみのある、不思議な魅力を秘めたキャラクターを演じきった。この2人が居酒屋で会話を交わすシーンは作中の名場面の一つだ。特にメフィラスの独特な台詞回しは公開直後からSNS上で話題となり、「○○、私の好きな言葉です。」に代表される“メフィラス構文”をまねる人も続出。作品ヒットの大きな一因となった。

 長い歴史により、どの世代にも浸透するヒーロー、ウルトラマン。「『巨大ヒーロー』は等身大のヒーローたちとは異なり、見上げる存在であり、子供の憧憬であり、心の支えとなる存在」(清水氏)。『シン・ウルトラマン』はその巨大ヒーロー作品の持つ本質的魅力を、現代に鮮やかに描き直した。

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