※日経エンタテインメント! 2022年10月号の記事を再構成
日本人2名を含む日中韓9人組グローバルガールズグループのKep1er(ケプラー)。昨年、韓国のオーディション番組から誕生した彼女たちは、番組放送中から大きな話題を集め、韓国デビューミニアルバム収録の『WA DA DA』はTikTokでもバズった結果、世界的なヒットソングに。9月7日に日本デビューを果たした彼女たちの足跡と魅力を解説する。
2021年8月~10月にかけて放送された、韓国のオーディション番組『Girls Planet 999:少女祭典』、通称『ガルプラ』から誕生したKep1er。ユジン、シャオティン、マシロ、チェヒョン、ダヨン、ヒカル、ヒュニンバヒエ、ヨンウン、イェソからなる、日中韓の9人組グローバルガールズグループだ。今年1月に韓国でデビューをし、9月7日にはシングル『FLY-UP』で日本デビューも果たした。
デビュー作である、韓国1stミニアルバム『FIRST IMPACT』は、発売初日に計15万枚以上を売り上げ、初週セールスも20万枚を突破。これはともに、歴代K-POPガールズグループのデビュー作品として1位の記録を更新した(当時)。
なかでもリード曲であるダンスチューン『WA DA DA』は世界的な大ヒット曲に。ミュージックビデオは、公開から約3カ月で1億回再生を記録。キャッチーな振り付けもウケてTikTokに波及し、「#WA DA DAチャレンジ」の視聴は7億回再生を突破している。
日本でも『WA DA DA』人気はすさまじく、LINE MUSICのデイリーランキングでは、配信日翌日の1月4日から7月6日までの間、トップ100にランクインするロングセラーに。LINE MUSICのコンテンツプロデューサー松村奈央氏は「約半年という長い期間チャートに入り続けるのは、人気アーティストでも難しいことです。最近だと、Saucy Dogの『シンデレラボーイ』と同じようなロングヒットの流れに近い」と話す。
8月10日にはストリーミングの累計再生数が1億回を突破。K-POPではBTS、TWICEに続く3組目の快挙となった(Billboard JAPAN調べ)。
『ガルプラ』での切磋琢磨
Kep1erの魅力はどこにあるのか。ポイントとして挙げられるのは、「パフォーマンス力の高さ」「グローバルグループの多様性」「かわいさとガールクラッシュの両立」の3つだ。
まず、「パフォーマンス力の高さ」については、彼女たちを生んだオーディション番組『ガルプラ』について振り返る必要があるだろう。この番組は、21年に最も注目を集めたオーディションの1つで、IZ*ONE、JO1といった数多くの人気グループを輩出した『PRODUCE 101』シリーズなどを生んできた韓国のエンタテインメント企業CJ ENMが手掛けた。応募総数は1万3000人にのぼり、その中から日本、韓国、中国でオーディションを通過した各地域33名、計99名が成長しながら競い合う様子が描かれた。
元アイドルや元練習生といった、歌やダンスの経験値の高い参加者が多く、しかも審査過程で課されるミッションの中には、ラップのリリック、振り付け、フォーメーションなどを自ら能動的に考える課題もあった。そのような高レベルのオーディションを勝ち抜き選ばれた精鋭9人で構成されるのがKep1erのため、パフォーマンス能力も必然的に高いのだ。
ダンサー、振付師などとして活躍し、最新のK-POP事情を配信している人気YouTuberでもあるARATA氏は、「K-POPのトレンドを作ってきたオーディション番組のなかでも、王道タイプの番組からデビューしているので、Kep1erは筋金入りの猛者たちの集まりと言えます。パフォーマンス力の高さは折り紙つきですし、ポテンシャルもあるので、今後のさらなる成長も期待できます」と語る。
「グローバルグループの多様性」という点では、韓国人6名(ユジン、チェヒョン、ダヨン、ヒュニンバヒエ、ヨンウン、イェソ)、日本人2名(マシロ、ヒカル)、中国人1名(シャオティン)の多国籍編成というポイントが挙げられる。認知度や人気の面でグローバルに広がっていることに貢献していると考えられ、実際に『WA DA DA』は世界11カ国のiTunesチャートで1位を獲得している。
また、『ガルプラ』を通して、メンバーたちにもグローバルな多様性が身についたのではないかとARATA氏は指摘する。「各ミッションが韓国人、日本人、中国人がセットとなって取り組むスタイルだったので、国際交流がかなり活発になされていました。そのなかで多様性を尊重しながらも乗り越えていく姿がとても印象的でしたね。これから世界で活動していく上でも、必ず生きてくるのではないかと思います」。
「ガールクラッシュとかわいさの両立」に関しては、まずかわいさをメンバー全員が備えている点を強調したい。それは『ガルプラ』が視聴者投票制だったこともあり、“愛され力”なしには多くの人から票を得ることはできないからだ。一方、ガールクラッシュは、近年K-POPシーンで注目を集めるキーワードで、BLACKPINKに代表される「女性が憧れるかっこいい女性」のこと。こちらの面でも、Kep1erのメンバーはパフォーマンス力の高さから、ハイレベルなダンスに乗せて、相手を睨むようなクールな表情を作るスキルも持ち併せている。つまり、彼女たちは両方を兼ね備えたハイブリッド型なのだ。
楽曲もハイブリッド型
この両立は楽曲にも表れている。『WA DA DA』は、サビ直前にクールなEDMテイストになったかと思うと、サビでは一転してアイドルソングのようなキャッチーなサウンドへと変化。日本デビューシングル『FLY-UP』収録の『Wing Wing』も、華やかなベースラインにビートが際立つダンスナンバーでありながら、サビではメロディアスな展開となるのだが、メンバーたちは歌とダンスでそれらを巧みに表現している。
さらに、「ガールクラッシュとかわいさのごちゃ混ぜ感もいい」とARATA氏は言う。「Kep1erのメンバーはビジュアルや身長が様々で、それがいい意味での凸凹になっているんです。そのたたずまいを、パフォーマンスでさらにかっこよくもかわいくも表現できるのは強みだと思います」。
オーディション発のグローバルグループとして、多様性と多彩な表現力を持つKep1er。彼女たちがこれから刻んでいくストーリーが楽しみだ。