相模原市、町田市、八王子市の3市が接するエリアには、リニア新駅の期待が高まる橋本駅があり、そこを国道16号が走る広域経済圏になっている。近隣住民であるトランスコスモス・アナリティクス取締役の萩原雅之氏が、リサーチャー視点でこのエリアの魅力と将来性を分析。橋本エリアは武蔵小杉&新横浜が合体したような街になると予想する。

橋本駅付近から国道16号を北上すると、町田市を経由して八王子市に入る
橋本駅付近から国道16号を北上すると、町田市を経由して八王子市に入る

 2022年5月、総務省「多様な広域連携促進事業」に相模原市・八王子市・町田市の提案が採択された。相模原市は神奈川県、八王子市と町田市は東京都だが、県境・市境意識は希薄で、生活圏、経済圏を共有している。3市はこれまでも都市間交流を進めてきたが、さらに圏域の現況調査や将来予測を実施し、持続可能で広域的な行政サービスの提供体制を確保していく考えだ。

 3市の人口は合計171万人に上る。三重県や熊本県に匹敵する規模だ。市役所のある八王子駅、相模原駅、町田駅をつなぐJR横浜線とともに、国道16号線はこの広域経済圏の背骨に当たる。本稿で取り上げる上記地図のエリアでは、町田市の西側が細長く帯状になっていて、東西幅は10キロメートルを超えるが南北幅はわずか600~700メートルほどだ。地図の真ん中を3つの市をまたいで縦に走っているのが国道16号線で、八王子市内は本道とバイパスの2ルートが使える。

 なお筆者は、多摩ニュータウンの西端、東京都立大学と三井アウトレットパークのある南大沢に1994年から居住している。八王子市の南端に当たり、南欧をイメージしたマスタープランに基づいて開発した、多摩ニュータウンの中では最も新しい街で、町田市と相模原市も近所という感覚だ。

かつての武蔵小杉を想起させる橋本駅エリア

 3市広域連携の要となる位置にあるのが、2027年にリニア中央新幹線の新駅が開業予定の橋本(相模原市)エリアである。実際の開通は少し先になりそうだが、今後10年で劇的に変貌するのは確実だ。

橋本駅南口エリア全体のイメージ
橋本駅南口エリア全体のイメージ
出所:相模原市広域交流拠点整備計画 概要版

 橋本駅は京王相模原線の終点で、新宿駅へは40分少々。横浜と八王子を結ぶJR横浜線が通り、茅ケ崎に向かうJR相模線のターミナルでもある。リニアの新駅「神奈川県駅」(仮称)は、橋本駅南口向かいの県立相原高校の移転跡にできる。戦前は相原農蚕学校といい、養蚕が盛んだった八王子と横浜間の16号線と重なる「絹の道」とも縁が深い。

 古くからの商業施設は駅の北側に集中するが、駅広場は回廊デッキでタワーマンションやイオンなどにつながるため路面店が目立たず、にぎわいはさほど感じない。南側も16号線沿いの大型ショッピングセンターのアリオ橋本以外はほぼ何もない状況だ。現段階で10年後を想像するのは難しいが、相模原市の開発計画を基に街を歩いてみると、武蔵小杉(川崎市)と新横浜(横浜市)の特性を併せ持つエリアになると予想できる。

 筆者は1980年代に武蔵小杉に住んだことがある。当時は駅前のイトーヨーカドーが目立つ古い街という印象で、綱島街道沿いには工場や空き地が多く、東急東横線の中では家賃も相対的に安かった。橋本エリア南側の工場群や2000年代に入ってタワーマンションがぽつぽつと建ち始めた現在の光景は、武蔵小杉の発展過程ととてもよく似ている。南口の相模原協同病院跡にはランドマークとなる29階のタワーマンションが 26年に完成予定で、利便性向上と住宅地としての人気とともに現在の武蔵小杉のような光景になる可能性は高い。橋本駅周辺の公示地価も5~6年前から上昇を続けている。

橋本駅周辺の住宅地の地価は上昇の一途
橋本駅周辺の住宅地の地価は上昇の一途
出所:国土交通省地価公示・都道府県地価調査

 また、リニアで品川駅まで10分という都心アクセスの向上は、ビジネス街として発展した新横浜を思い出させる。新横浜も東海道新幹線の開業時は農村地帯で、停車本数も少なかった。それが周辺の住宅地開発とともに、オフィスビルが集積し、横浜アリーナと日産スタジアム(横浜国際総合競技場)の開場で魅力を高めた。

 橋本も職住接近のビジネス街としての発展条件を備えており、多摩ニュータウンの再評価にもつながるだろう。橋本エリアにつながる相模原駅北口の米軍一部返還地(約15ヘクタール)には「相模原スポーツ・レクリエーションパーク」が20年11月にオープンし、スタジアムの誘致に乗り出している。共通点は多い。

 橋本駅北口から多摩丘陵に向かって2キロメートルほど歩いたところに多摩美術大学がある。この地に美術学部が移転したのは1974年、学生は橋本駅からのスクールバスや八王子駅から16号線を通る急行バスに乗って通学している。

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