リテールメディア大研究 第8回

グーグルが「リテールメディア」の開発支援に力を入れ始めている。これまで自社の事業で培ってきた広告事業に適したデータ基盤などのインフラと、「YouTube」をはじめとする広告配信面の両方を一貫して支援できる強みがある。既にドラッグストア大手のマツキヨココカラ&カンパニー(以下、マツキヨ)や、スーパー大手のイオンリテールなどのリテールメディアを開発した実績も出ている。グーグルは小売りが持つデータの価値は非常に高いと考えており、「データの安売り」は絶対にすべきではないと警鐘を鳴らす。

なぜ小売りは「データ」を安売りしてはいけないのか。なぜグーグルがリテールメディアの開発支援に力を入れ始めているのか。その答えとは(画像:shutterstock)
なぜ小売りは「データ」を安売りしてはいけないのか。なぜグーグルがリテールメディアの開発支援に力を入れ始めているのか。その答えとは(画像:shutterstock)

 国内でもリテールメディア市場拡大の兆しが見え始める中、サービスの開発・運用を手掛ける支援会社が増えている。中でも注目の1社がグーグルだ。同社がリテールメディアに力を入れ始めていることはあまり知られていないが、開発支援を始めるのは自然な流れだった。

なぜグーグルがリテールメディア支援?

 リテールメディアの本質は小売りの持つデータを活用した、新たなデジタル広告のプラットフォームの構築だ。そのために必要な要素は広告配信に適したデータを蓄積し、分析する「データ基盤」、そのデータを基に「広告を配信する仕組み」、「広告の配信先となるデジタル上の消費者接点」となる。

 グーグルは検索サービスや動画サービスなど、さまざまなサービスから得られる膨大な利用データを解析し、それを基に多様な広告ソリューションを開発してきた。つまり、リテールメディアの開発に必要なデータ基盤や配信面、広告事業開発のノウハウは既にそろっているといえる。「リテールメディアに特化したサービスを開発せずとも、今あるツールやノウハウを組み合わせることで、小売企業に満足してもらえる支援サービスを提供できる」とグーグルの川合純一マネジングディレクターは強みを語る。

 特集第3回 リテールメディアの5ステップを公開 ピンポイントで広告配信 でも解説したように、リテールメディアの構築・運用には、5つの手順をたどる必要がある。まずは、「CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)」を設置し、そこに購買データなどを収集する。次に、そのデータを分析し、配信したい層のグループ(セグメント)をつくる。そして、そのセグメントに対して広告を配信し、その効果を小売企業の持つ購買データを用いて計測するという流れになる。

リテールメディアの構築・運用には、この5つの手順をたどる必要がある
リテールメディアの構築・運用には、この5つの手順をたどる必要がある

 グーグルがリテールメディアを支援するうえでの強みは、この5つの手順を全て自社の既存のサービスで賄える点にある。まず、データ基盤だ。グーグルのクラウドサービスである「GCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)」では、データ基盤の整備から、AI(人工知能)を活用したデータの機械学習、そしてアプリケーションの開発・管理まで、さまざまなサービスが提供されている。

 グーグルが実際に支援した1社が、イオンリテールだ。同社は従来、他社のデータ基盤に購買データなどを蓄積していたものの、データ量が膨大なため、分析などに時間がかかり活用法は限定的だったという。

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