リテールメディア大研究 第6回

「リテールメディア」に関心があっても、データ不足や開発資金がないなどの課題を抱えている。そうした中小小売りが保有するデータの広告収益化を支援するのが、ネットワーク型広告の「RMN(リテール・メディア・ネットワーク)」だ。地方のスーパーなどの中小規模の小売りは、単独でリテールメディアを展開するにはデータや配信規模が不足していることが多い。RMNは中小規模の小売りが提供するスマートフォン向けアプリなどをシステム的につなぎ、横断的に広告を配信する仕組み。複数の企業がこのサービスに参入している。

小売り版のアドネットワークともいえる「RMN(リテール・メディア・ネットワーク)」が日本でも始動している(写真/SHutterstock)
小売り版のアドネットワークともいえる「RMN(リテール・メディア・ネットワーク)」が日本でも始動している(写真/SHutterstock)

 「リテールメディアにおける米国と日本の最大の違いは、広告の配信対象となる分母の数だ。アプリのMAU(月間アクティブ利用者数)が、最低でも200万人はいないと単独での展開は難しい。それができるのは大手小売りぐらいだ」

 卸会社の日本アクセスの子会社で、小売りのDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するD&Sソリューションズ(東京・品川)取締役共同CEO(最高経営責任者)の望月洋志氏は、日本のリテールメディアが抱える課題点をこう指摘する。そして、こう続ける。「米国ですらリテールメディアの成功例に挙げられるのは米ウォルマートや米ターゲットなど、大手小売りだけ。地方のスーパーの成功例は聞いたことがない」

 日本は地域ごとに食文化が異なるため、特定の地域で地場のスーパーマーケットが高い市場シェアを持つことも珍しくない。ただ、地域での市場シェアが高くとも、自社の顧客のうちデジタルツール上で接点を持てる層となると激減する。「小売業者のアプリは、利用者が顧客の数パーセントにとどまるということも珍しくない」と位置情報ベンチャーunerryの代表取締役CEOの内山英俊氏は言う。

 ただでさえ少ない広告配信可能な対象者を、性別や年代といったデモグラフィックデータや購買データで絞り込むと、さらにその対象範囲は狭まる。広告配信対象者が少なく、購買に与える影響が見られなかった場合、広告主からの継続出稿は期待できない。地場でどれだけロイヤルティーの高い顧客を抱えていても、地方の小売りが1社で広告事業を展開するには、配信対象者とデータの両方の規模が小さすぎるのが現状だろう。

小売り版の「アドネットワーク」が登場

 そこで登場するのが「RMN(リテール・メディア・ネットワーク)」という概念だ。複数のリテールメディアを束ねたネットワーク型広告を指す。これは、デジタル広告でいうアドネットワークの一種だ。

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