
家電量販店として「リテールメディア」に挑むのがヤマダデンキだ。同社は2021年4月にサイバーエージェントと共同で広告サービス「ヤマダデジタルAds」を開始した。リテールメディアで効果を出すためには、「販売のプロ」である小売りならではの知見が重要になる。ヤマダデジタルAdsでは、ときにヤマダデンキが広告クリエイティブの制作代行を請け負うこともあるという。リテールメディア事業の担当者が、約1年半の事業展開で見えてきた期待と現実を本音で語った。
ヤマダデンキは、最初から広告事業の展開を標榜していたわけではない。自社のマーケティング課題の解決を目指し、購買データを用いたデジタル上での顧客接点拡大を目指す仕組みづくりを進める中で、副産物として広告サービスが生まれた。自社だけでなく、取引先であるメーカーの広告費も使いながら、デジタル販促施策の精度を高めていこうという発想だ。
リテールメディア事業の担当者である広告ソリューション部の綿貫哲也部長は当時、デジタルメディアを活用した集客を担う「デジタル広告課」に所属していた。同社は、自社の広告戦略に悩んでいた。スマートフォンの普及などでテレビの視聴時間が徐々に減り、テレビCMの影響力の弱まりを感じていた。また、同社がこれまで最大の武器にしていた、折り込みチラシの効果にも若干の陰りが見えはじめていた。
これを補うため、新たな集客施策としてデジタル広告の活用を推進する組織として、デジタル広告課が設置された。専門組織を設置してデジタル広告の活用を強化したが、店舗への来店者が増えたとしても「それが本当にデジタル広告によるものなのか証拠がない」(綿貫氏)ため、今度は効果の立証が課題になった。
そこで取り組んだのが、ポイントカード会員との連係だ。ヤマダデンキはデータ活用支援企業トレジャーデータ(東京・港)のCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を導入していたものの、有効的な活用法を見いだせずに持て余している状況だったという。そこで、ヤマダデンキの広告施策を支援するサイバーエージェントと協議する中で、デジタル広告の効果検証に、このCDPを活用することを決めた。
具体的には、まず基幹システムに蓄積しているポイントカード会員の購買データなどのデータをCDPに取り込む。次にCDP経由で広告配信対象を抽出し、対象者に広告を配信する。その結果をポイントカード経由で取得した購買データと突き合わせることで、実売への影響を測ろうという取り組みだ。ところが、結果としては惨敗だったという。
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