続・Shopify、BASE、STORES研究 第7回

テレビで紹介されたりSNSでバズったりすることで、小さな店のECサイトに一時的に注文が殺到することは珍しくない。そのチャンスを“瞬間風速”で終わらせず、定着させるにはどうすればいいか。「1日で2800本売れたチーズテリーヌ専門店」として話題の「h.u.g-flower」オーナーの遠藤雄一氏に聞いた。

6つに個包装されたh.u.g-flowerの「チーズテリーヌ」3800円(税込み)。有機農法で作られたバニラビーンズをたっぷりと使用し、乳製品は全て北海道産。小麦粉は一切使わず、グルテンフリー
6つに個包装されたh.u.g-flowerの「チーズテリーヌ」(税込み3800円)。有機農法で作られたバニラビーンズをたっぷりと使用し、乳製品は全て北海道産。小麦粉は一切使わず、グルテンフリー

 チーズテリーヌ専門店「h.u.g-flower」の1号店が横浜市にオープンしたのは2019年9月。その直後にテレビで紹介され、大ブレーク。その後は「h.u.g-flower GIFU」(岐阜市)、「h.u.g-flower TOKYO」(東京都港区)と実店舗を拡大し、ECと合わせて1日に2800本も売れる日があるほどの人気店にまで成長している。

2020年12月にオープンしたカフェ併設の「h.u.g-flower GIFU」(岐阜市)
2020年12⽉にオープンした「h.u.g-flower GIFU」 (岐阜市)

フラワーショップの苦境が、ビジネスチャンスに

 そのスタートは、オーナーの遠藤雄一氏が08年に岐阜市の柳ヶ瀬商店街にオープンした小さなフラワーショップだった。「6年間、店舗営業をして感じたのは、やはりフラワーショップは間口が狭い、クローズドな業態であるということ。結婚式や葬式など人生の節目には必要なものだが、日常的にはあまり必要とされないため、収益を上げるのが難しかった」(遠藤氏)

 もっと日常に溶け込んだ業種と合わせることで花への関心を高め、間口を広げられないかなと考え、フラワーショップにカフェを併設した。そのカフェのランチでデザートとして提供していたスイーツの一つがチーズケーキ。これがチーズテリーヌ開発のきっかけとなった。

 最初にスタッフが作ったのは今よりも家庭的な味わいの素朴なチーズケーキだったが、凝り性の遠藤氏が改良を加え、「普通のチーズケーキ型ではなく、テリーヌ型にすることで差別化ができるのでは」と、チーズテリーヌの形に。さらに遠藤氏は男性をターゲットにしたスタイリッシュなワインバーも経営していたため、店で男性が食べても浮かず、ワインにも合うスイーツとしてチーズテリーヌをブラッシュアップしていった。その段階で小麦粉を入れないほうがイメージしていた味に近づくことが分かり、小麦粉不使用のグルテンフリー仕様に。あくまでも味を追求した結果だったが、グルテンフリーにしたことが、ブレークのきっかけになった。

 チーズテリーヌ専門店を開くきっかけとなったのは、フラワーショップを設計した建築事務所から、「横浜に広いスペースの物件があるが、シェアしないか」という誘いが来たこと。中華街にも歩いて行くことができるうえ、何より海が近い絶好のロケーションがひと目で気に入り、ショップをオープンすることに。建築事務所が想定していたのはフラワーショップだったが、遠藤氏はチーズテリーヌの専門店を出すことを思いつく。「地元のマルシェで1時間に何百本も売れることが時々あったので、ちゃんとデザインを考えてパッケージングしたらヒットするのではないかという予感があった」(遠藤氏)

 パッケージデザインやロゴデザインなどを整え、「最初から実店舗とECサイトの両輪でやっていくつもりだったので」(遠藤氏)、BASE(ベイス)を利用してECサイトも開設。視察からわずか2カ月後に、「h.u.g-flower YOKOHAMA」をオープンした。

パッケージは上質感のある箔押しのオリジナルボックスを使用。花屋ならではのデザインカードを添えている
パッケージは上質感のある箔押しのオリジナルボックスを使用。花屋ならではのデザインカードを添えている

テレビで紹介されてすぐ、ECサイトが「完売」に

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