
日本で実店舗がなくなった「アンナミラーズ」がバーチャルショップとして復活――。2022年8月末に国内唯一の店舗であるアンナミラーズ高輪店(東京都港区)が閉店してから約2カ月、なんとその高輪店がオンライン上で復活したのだ。その裏には、1年前にECプラットフォーム「STORES(ストアーズ)」を活用してアンナミラーズのオンラインショップを立ち上げた“EC素人社員”の試行錯誤があった。
バーチャルショップのページを開くと、ショーケースにはアンナミラーズの看板商品であるパイが何種類も並ぶ。まさに、閉店した高輪店のテークアウト用パイカウンターそのものだ。商品をクリックすると紹介画面が表示され、購入ボタンを押すとそのままオンラインショップで購入することもできる。
高輪店閉店の反響の大きさを受けて急きょオンラインショップを立ち上げたのではと思いきや、実はアンナミラーズのオンラインショップがオープンしたのは1年前だという。実は高輪店の閉店が決まる前からオンライン販売をスタートしていたのだ。そして今回、高輪店がバーチャルショップとして復活した。
全国にいるファンに商品を届けたい
「アンナミラーズに思い入れがあるにもかかわらず、なかなかお店には行けないファンの方が全国にいる。そういう方々に商品を届けたいと考えたのがオンラインショップ立ち上げのきっかけ」と語るのは、アンナミラーズを日本で運営している井村屋で、オンラインショップの運営を担当しているフードサービス部の原沙織氏。
アンナミラーズは1973年に日本1号店を東京・青山にオープン。他にはないアメリカンパイやメイド服風の制服が人気となり、ピーク時には25店舗を展開していた。しかし、2012年に横浜ランドマークタワー店が閉店してからは、高輪店のみとなっていた。
アンナミラーズの商品は井村屋のオンラインショップでも販売しているが、こちらは商品営業企画部が担当しており、積極的な販売はしていなかった。一方、アンナミラーズのオンラインショップは飲食店や食物販店の運営を担当するフードサービス部がゼロから立ち上げた。
そこで担当を任されたのが、産休から復帰したばかりの原氏。しかも、ECサイト運営の経験はなく、PCの知識やWebマーケティングのスキルにたけているわけでもなかった。原氏を起用した理由について、同社フードサービス部の髙木伸哉部長は「製造や販売、開発に携わってきたことで業務に対する見識と人脈を広く持っており、新しいことに対しても柔軟なので、デジタル担当に適していると考えた。20~30代女性というメインターゲット層にも該当しているので、顧客目線を反映してもらうことも期待した」という。
ECサイトを自力で立ち上げたが、集客の発想がなかった
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。