
サウナを題材にした人気漫画『マンガ サ道』の作者、タナカカツキ氏が総合プロデュースを手掛けるサウナ施設「渋谷SAUNAS(サウナス)」。2022年12月にオープン予定の同施設は開業にあたり、クラウドファンディングで資金調達を行っている。ユニークなのは、既存のサービスではなく、ストアーズ(東京・渋谷)が運営するECプラットフォーム「STORES(ストアーズ)」で立ち上げたECサイトをクラウドファンディングに活用していることだ。しかも「支援プラン」として年間パスや入場チケットだけではなく、豊富なアパレル商材をつくり、販売するというアプローチを採っている。プロジェクト開始から3カ月で1400万円以上の資金集めに成功した理由に迫った。
老若男女問わず、大ブームを巻き起こしているサウナ。中心価格が300円の雑貨店「3COINS」では、サウナグッズが飛ぶように売れ、1カ月分を想定した在庫が1週間前後でほぼ完売になる状況だ。
▼関連記事 3COINSのサウナグッズ完売間近 愛好家も主婦層もつかんだ要因そんな空前のサウナブームの中、サウナ愛好家の間で話題を呼んでいる専門施設が2022年12月、東京・渋谷の桜ヶ丘町に開業する。名称は「渋谷SAUNAS」。Webサイト上に書かれたうたい文句はこうだ。
「趣向を凝らした9つのサウナ室、頭まで浸かれる深い水風呂、さらに、ととのい後に仕事が捗るワークスペースと会議室も完備。サウナファンが追い求めた、理想のサウナが遂に誕生します。」
同施設は、人気漫画『マンガ サ道』の作者、タナカカツキ氏が総合プロデュースを手掛ける。タナカ氏が総合プロデュースするサウナ施設は初めて。プロジェクトに関わるメンバーはタナカ氏をはじめ、「温浴のプロ集団」ではない。しかし全員サウナ愛好家であることから、ユーザー目線で理想的なサウナづくりを目指している。
同プロジェクトの企画・運営を担当し、STORESを利用したECサイトを構築した食品の企画・開発業などのTOYOKE(トヨーク、東京・渋谷)は、22年8月、オープンに先立ち、「渋谷SAUNASのさらなるサービスクオリティー向上のため」としてクラウドファンディング開始のプレスリリースを配信した。
するとタナカ氏のファンを始め、全国のサウナ愛好家の注目を集めてSNSで話題になり、3カ月で支援者約1400人、金額では1400万円を超える資金調達の原動力となった。なぜTOYOKEは既存のクラウドファンディングプラットフォームではなく、STORESを採用したのか。EC責任者に話を聞いた。
ECサイトを応用 自前でクラファンに挑戦
クラウドファンディングを開始するにあたり、最初は認知を広げやすいなどの理由から、既存のクラウドファンディングサービスの利用を検討していたという。しかし「目標金額が2000万円と大きいため、手数料の負担がばかにならないという懸念があった」(TOYOKE企画開発部・高橋真氏)。また既存のプラットフォームではカスタマイズ性に乏しいこともあり、ブランディングを重視する渋谷SAUNASには適していないという難しさもあった。
そこで「ECサイトの仕組みを応用できないか?」 と考え、以前から交流があったストアーズに勤める友人に話を聞いた。すると、過去にSTORESで構築したECサイトがクラウドファンディングに活用された例があると知り、渋谷SAUNASでもSTORESを利用することになった。
他のEC構築プラットフォームも検討したというが、商品の発送期限に課題があった。渋谷SAUNASで販売しているTシャツなどのグッズは受注生産しているため、入金から実際に顧客の手元に商品が届くまでに2カ月以上かかる。他のプラットフォームも受注生産に対応しているものもあるが、入金から発送までの期限について制約が設けられている場合がある。一方、STORESはTOYOKEが予定する発送期間でも「問題ないと分かった」(高橋氏)。他にも、クラウドファンディングを実施する上でのさまざまな課題をクリアできたことから、最終的にSTORESに決めたという。
「支援プラン」にアパレルを取り入れた3つの理由
ECサイト上では、回数券(2万2000円・税込み、以下同)、入場チケット(2200円)、年間パス(29万7000円~)に加え、Tシャツ(5500円)やトートバッグ(3850円)など様々なグッズをクラウドファンディングの支援プランとして販売している。売り上げの割合(22年11月4時点)は、「入場チケット関係が約7割、グッズが約3割」(TOYOKE取締役・曽山祐企氏)となっている。
アパレル商材など、グッズもクラウドファンディングの支援プランとして販売することになったのには、3つ理由がある。
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