「Amazon Go(アマゾンゴー)」をはじめとした欧米のレジなし店舗最新事情をリポートする連載の第3回。普及が進む海外では、移動可能なコンテナ型やカフェ併設型、スタジアムなど混雑必至のロケーションに特化したオートノマス・ストアなど、バリエーションが広がっている。専門家が現地で見た衝撃の実態とは。

ポルトガルのオートノマス・ストアベンダー、Sensei(センセイ)が提供するコンテナ型のモジュール店舗(画像/Senseiホームページから)
ポルトガルのオートノマス・ストアベンダー、Sensei(センセイ)が提供するコンテナ型のモジュール店舗(画像/Senseiホームページから)

 前回まででAmazon Goに加えて、Accel Robotics(アクセルロボティクス)、Standard AI(スタンダードAI)、OctoBox(オクトボックス)と計4社の取り組みを紹介してきた。ひとくくりにレジなし店舗「オートノマス・ストア」といっても、それぞれ全く異なった顧客体験を志向していることはお分かりいただけたと思う。

 今回は、欧米のベンダー10社の調査・ヒアリングを行った結果、見て取れた2つの方向性のうち、「新たな活用シーンの創造」にチャレンジしているベンダー3社の戦略をそれぞれ特徴的な点にフォーカスして解説していきたい。

(1)Zippin(ジッピン)
待機時間を失くし、ひたすら回転率アップを狙う

 駅や空港、スタジアム、ライブ会場など、ピンポイントかつ特定の商圏にチャンスを見いだし、出店を進めているのが米Zippin(ジッピン)だ。同社は直近では、2022年10月にローソンのレジなし店舗「Lawson Go MS GARDEN店」を三菱食品本社でオープンさせている。

 海外でのZippinはというと、全米のプロスポーツ会場の30%に店舗を展開しており、スポーツ・エンターテインメント施設における最大のオートノマス・ストアベンダーの地位を確立している。

 駅や空港の他、スポーツやエンターテインメントの会場など、明確に買い物以外の目的を持って人々が集う場所では、乗車時間前や試合のハーフタイム、開演前など、短時間に顧客が集中することで販売の機会損失や顧客満足度を損ねてしまう課題がある。Zippinはレジ待ちに費やす時間を削減し、回転率を上げることを重要指標に据えており、米国で展開する50店舗で、のべ50万人以上の利用者を獲得し、実に14万時間以上に相当する待ち時間を短縮しているという。

 実際に、NBAのブルックリン・ネッツ本拠地であるニューヨークのバークレイズセンター内にあるZippinの店舗を訪れた。NBAの試合当日だったため、ハーフタイムにアリーナから通路へ一歩外に出ると、案の定、人がごった返しており、ポテトフライなどの軽食やアルコール飲料を販売している有人対応の売店ではだいたい15分待ちの行列ができていた。

スタジアム内の通常売店は行列ができており、待ち時間15分程度だった(写真/筆者撮影)
スタジアム内の通常売店は行列ができており、待ち時間15分程度だった(写真/筆者撮影)

 一方、アルコール飲料を専門で扱う「Zippinオートノマス・ストア」は、待ち時間なしでスムーズに入れた。スタッフによる年齢確認を済ませると、ZippinアプリのQRコードをフラッパーゲートにかざして入店、商品を棚から取ってそのまま退店するだけだ。この店舗では商品が4アイテムに絞られていることもあり、入店から1分もかからずに買い物を終えることができた。大混雑の有人売店がある中で、この極めてスマートな購買体験を見せつけられると、もはや悩む余地はない。

スタジアム内のZippinを活用したレジなし店舗は待ち時間が0分。この店舗にはホットフードやセルフのドリンクサーバーなどはなかったが、Zippinの他の店舗には扱う店もあるようだ(写真/筆者撮影)
スタジアム内のZippinを活用したレジなし店舗は待ち時間が0分。この店舗にはホットフードやセルフのドリンクサーバーなどはなかったが、Zippinの他の店舗には扱う店もあるようだ(写真/筆者撮影)

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