
環境負荷増大への意識が高まり、これまでも多くの企業がCSR(企業の社会的責任)などに取り組んできたが、ここに来て環境保護を打ち出したD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)が存在感を高めている。第1回は環境保護に配慮した素材のスニーカーなどを販売する米オールバーズの手法からサステナブル(持続可能)時代の新ビジネスの生み出し方に迫る。
世界の気候変動対策を話し合う第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)が、エジプトで2022年11月6日から開かれた。洪水や干ばつなど気象災害での損失や被害に向けた対応が議題となり、途上国への資金支援などが話し合われた。
世界的に気候変動への意識が高まり、事業の中にパーパス(社会的存在意義)が求められる中、あらゆる企業は環境保護の取り組みに無縁ではいられない。これまでも、多くの企業は製造や輸送の過程で無駄をなくす、あるいは寄付や慈善事業などでSDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルへの対応に取り組んできた。
環境の取り組みは会社の規模にかかわらず広がっている。その中でも、存在感が高まっているのは、成り立ちからサステナビリティー(持続可能性)に軸足を置いたD2Cブランドだ。シーズンごとの廃棄の問題で無駄が多いとされてきた衣料、人口増加の課題や健康にも関わりがある食の分野という日々の生活に密着した分野で新興企業の動きが目立つ。
そうした企業の代表と言えるのは、サステナブルに配慮した靴を販売する米オールバーズだ。バイオテクノロジーの専門家であるジョーイ・ズウィリンジャー氏が、サッカーの元ニュージーランド代表で副キャプテンを務めていた共同創業者と米サンフランシスコで16年に立ち上げた。
羊の育て方や環境への配慮をした認定済みのウール、植物油やサトウキビ由来のソール、靴ひもは再生ポリエステルを利用するなど、サステナブルさを重視したスニーカーやランニングシューズをEC(電子商取引)サイトや直営店で販売してきた。現在では日本の3店舗を含む世界53店舗を展開している。
まずは快適さ、サステナブルは二の次
カフェやレストランが並ぶ米サンフランシスコのヘイズバレー地区にあるオールバーズの店舗を訪れた。「確かに履き心地がよかったよ」。購入したスニーカーの箱を手に持ちつつ、男性が家族に話しかけながら出口に向かっていった。壁にスニーカーの見本が並んでいるものの、所狭しと商品が並ぶ日本の典型的な靴店と比べるとアイテム数は少ない。その分、ゆったりとしたスペースで商品を選び、試着ができる。
サステナビリティーが売り物であるならば、どんな素材や製法を使っているかという詳しい説明書きが店内にあってもよさそうだが、目立つ場所には見当たらない。商品名のパネルをよく見ると、カーボンフットプリントの数値を提示している。素材、製造、輸送から廃棄までの二酸化炭素排出量を算出したもので、全ての商品でこの数値を公表している。とはいえ、言われなければ見落としてしまうほどだ。
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