
米国アパレル業界で中古品を扱う業態「スリフトストア」が存在感を高めている。大量の商品が並ぶ店内から好みのものを発掘する消費スタイルは、SNS(交流サイト)でもZ世代の若者を引き付ける。価格帯や希少性だけでなく、出品者を巻き込み、一つのブランドのように消費者へ双方向のコミュニケーションをすることで成功する企業も出現。独自デザインのコラボスニーカーを投入するなどD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)との融合も広がってきた。
石油産業に続き、世界で2番目に環境負荷をかけているといわれるファッション業界。製造工程で多くの温暖化ガスを排出しており、環境負荷削減のためには、新たにものを作るというプロセスを抑え、既にあるものを循環させることが必要となる。循環型経済を加速させるきっかけの一つとなりそうなのが、現在、米国で急成長中のスリフトストアだ。
thrift(スリフト)とは節約の意味で、スリフトストアとは生活者もしくは企業から、不要なものを寄付・販売された中古品や古着などを再販する、いわゆるリサイクルショップのこと。そのような場所でショッピングを楽しむことを、「スリフティング」といい、TikTokでもハッシュタグ「#Thrifting」は59億回のView数を稼ぐほどの人気となっている。
リサイクルショップというと日本でも珍しくはないが、米国のスリフトストアでは細分化が進む傾向が強くなっている。まさにブランドそのもののように、特定の興味を持ったファンを抱え、リアルイベントのほか、ゲームとのコラボなどデジタル上でのコミュニケーションを強化している。
新型コロナ前と比べて125%の成長
まずは市場の状況や各ショップの立ち位置を確認しておきたい。米国の代表的なスリフトストアの一つである「ThreadUp(スレッドアップ)」の報告書によると、米国では2021年の2次流通全体の売り上げは350億ドル。新型コロナウイルスの感染症拡大前(19年)と比較すると125%の成長を見せている。
この急成長の背景には、特にファストファッションを購入していた層が、スリフトストアを好んで利用しはじめた、という行動変化にも大きく影響を受けている。今までは、迷わずファストファッションブランドをチェックしていた人々が、まずはスリフトストアをチェックし、お目当ての品がない場合、もしくは購入を急いでいる場合にだけファストファッションを利用する、という具合だ。
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