
雑誌のデザイナーとして「POPEYE」「FRaU」など1万冊以上を手掛けてきた野口孝仁氏。2008年ごろからは数々の企業ブランディングにも関わり、人気商品も多数生み出してきた。その成功の裏には、雑誌作りで培った経験があったという。
ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート代表
「思い返してみると、アイデアが枯れて悩んだことはなかった」と言うのは、ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(東京・港)の代表取締役・野口孝仁氏。最初は「POPEYE」(マガジンハウス)のデザイナーとしてスタートし、「東京カレンダー」(東京カレンダー、当時はアクセス・パブリッシング)や「FRaU」(講談社)など、多種多様な雑誌のアートディレクションを手掛けてきた。現在までに関わった雑誌は1万冊以上。
そんな野口氏だが、2008年ごろからは数々の企業ブランディング(CI/VI/サービス開発)にも関わるようになった。「雑誌のデザイナーが企業ブランディングでも成功した」というと、ピンとこない人もいるかもしれない。しかし、野口氏の仕事にはどれも、雑誌作りで培ってきた編集の手腕が生きている。
そもそも編集とは何か。野口氏は「ありとあらゆる点(コンテンツ)を集めて編み、新しい視点や価値を生み出すこと」と話す。分かりやすいのが、以前流行した「夜パフェ」だ。「夜」と「パフェ」という異なる点(コンテンツ)を掛け合わせることで、「夜にパフェを食べる」という新しい文化を生み出した。
「これは、雑誌の特集テーマを決める作業によく似ている。例えばハワイ特集なら『大人のハワイ』『暮らすように旅するハワイ』など、幾つかの点と点を掛け合わせて新しい価値を生み出している」(野口氏)。企業ブランディングやパッケージデザインの個性付けでも、この手法が使えるという。
野口氏は「優れた編集者は、1つの点を見るだけで、それをどう編み上げたら面白いかを瞬時に判断できる」と話すが、多くの人にとってそれは至難の業だろう。そこで野口氏はこの方法をさらに発展させ、周囲を巻き込みながら実践で活用できる形にしている。
百貨店×横丁×利き○○
分かりやすいのが、18年にオープンした「大丸札幌店」の「KiKiYOCOCHO(キキヨコチョ)」の事例だ。
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