Zの次に来る「α世代」が知りたい 第4回

子供に人気の職業体験施設、キッザニア。日本に上陸した2006年のメインターゲットはZ世代だった。対象がα世代に移行した現在、その変化をどう見極め対応しているのか。また、22年10月に新規参画したコーセーはα世代に向けてどうプログラムを設計したのか。両社のアプローチを探る。

キッザニア東京にオープンした、コーセーの「ビューティスタジオ」。ヘア&メイクアップアーティストの体験ができる
キッザニア東京にオープンした、コーセーの「ビューティスタジオ」。ヘア&メイクアップアーティストの体験ができる

 「キッザニア」は、さまざまな職業を疑似体験できる商業施設。3~15歳の子供とその親が主なターゲットだ。警察署やメガネショップといった施設が、実物の3分の2のスケールで再現され、子供たちは興味のある仕事(パビリオン)を選んで体験する。体験にかかるのは、基本的に入場料のみ。疑似的な職業体験が、子供が社会について興味を持つきっかけになると支持され、現在、世界17カ国26都市で展開されている。

 日本には2006年、東京都江東区にキッザニア東京として初上陸。09年にキッザニア甲子園(兵庫・西宮市)、22年7月には13年ぶりとなる新施設、キッザニア福岡(福岡市)がオープンし、22年3月末時点で累計来場者数が2100万人を突破した。

キッザニア東京の街並み。少し大人の気分を味わえるよう、夕暮れの街をイメージしてつくられている
キッザニア東京の街並み。少し大人の気分を味わえるよう、夕暮れの街をイメージしてつくられている

 子供が体験できる職業やサービスは、70~100種類ほど。実在する企業がスポンサーとして出展するパビリオンが大半で、各社のノウハウを詰め込んだ本格的な体験が子供たちにも人気を博す。例えば、出光興産はガソリンスタンド、KDDIは通信会社、全日本空輸は空港・飛行機など、日本のインフラを支えるパビリオンがラインアップされている。

 企業にとっては、社会的責任(CSR)やサステナビリティー(持続可能性)への取り組みの一環であると同時に、タッチポイントが少ない子供に対し、ブランド価値をアピールできる数少ない場だ。企業が本腰を入れる裏には、将来のファンを育成したいという狙いもある。

 現在、キッザニアを利用する子供の多くは、22年に12歳以下とされる「α世代」。新たな消費の主人公として期待されている「Z世代」(1990年半ば~2010年初頭に生まれた世代)が成人になって順々にキッザニアを卒業していき、世代交代の真っただ中だ。キッザニアを運営するKCJ グループ(東京・中央)広報部の中島めぐみ部長は、「両者を比べると、α世代は子供たちの価値観がより多様化している」と話す。

 本特集第1回の総論でも触れたように、α世代は授業にしても遊びにしても「モチベーションの足が早い」「興味が長続きしない」といわれる。これは生まれた時から身近にスマートフォンがあり、いつでも大量の情報に触れられる環境が影響すると考えられている。YouTubeなどの動画配信サービスやSNS(交流サイト)、スマホゲームといったコンテンツもあふれており、個々人の関心事は分散しやすく、移ろいやすい。結果、価値観も多様化してくのだろう。

▼関連記事 【第1回】 Z世代の次に来る「α世代」とは 6つの特徴、“タイパ”も進化

 ではこうしたα世代に対し、キッザニアはどう変化しているのか。中島部長は「α世代の子供たちの多様化を受け、パビリオンにも多様性が出てきた」と話す。

フライトディレクタにコンサルタント、変わるα世代向けプログラム

 その特徴が最も表れているのが、13年ぶりの新施設としてオープン間もないキッザニア福岡だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)やエンジニアリングなどに関連する職業体験ができるパビリオンを集めた「先端技術エリア」を設置。これは東京や甲子園にはない初めての試みだ。「子供たちがなりたい職業に応えるのはオープン時から変わらない。そのうえで、近年は最先端の技術を扱うパビリオンの出展が増加している」(中島氏)

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