Zの次に来る「α世代」が知りたい 第2回

授業にしても遊びにしても「興味が長続きしない」といわれるα世代。それならば、手を動かしながら考えて夢中にさせてしまおう――。そんな発想で教育分野に挑むのが、コナミデジタルエンタテインメントだ。定番の「桃太郎電鉄」(桃鉄)シリーズを教育向けに転用。将来のファン育成も視野に入れる。

最新作をベースに、教育現場向けにアレンジした『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』
最新作をベースに、教育現場向けにアレンジした『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』

 「桃鉄」こと「桃太郎電鉄」は、1988年から30年以上の歴史を誇るコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)の人気ゲーム。プレーヤーは鉄道会社の社長となり、すごろくの要領で日本全国を移動。各地で物件を買い集め、最初に決めた期間が終了時に一番資産を持っているプレーヤーが勝利となる。2020年11月に発売した最新作 『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』 は、久々の新作ながら累計販売本数350万本(ダウンロード含む、2022年3月時点)を超える大ヒット作となった。

2020年11月に発売し、累計販売本数350万本を突破した『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も 定番!~』
2020年11月に発売し、累計販売本数350万本を突破した『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も 定番!~』

 この桃鉄をα世代(22年時点で12歳以下)向けの教育に使おうというプロジェクトが始まった。さまざまな場所を巡ることから「地理などの地名を覚えるのに役立つという声は30年前からあった」と明かすのが、「桃鉄」シリーズのシニアプロデューサーであるKONAMIの岡村憲明氏。そこで、最新作をベースに、教育現場向けにアレンジした『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』(以下『桃鉄教育版』)を2022年9月15日に発表。教育現場でテレビゲームをするという試みは、教育業界でも話題になっている。

 桃鉄教育版は、主に学校教育機関の授業での使用を想定し、通常版に学習要素を追加するなど一部の仕様を変更した。学校現場では、文部科学省が示す「GIGAスクール構想」の実現に向け、小中学校にタブレット端末を1人1台配備している。端末やOSはまちまちであるため、どんな環境でも使用できるよう、桃鉄としては初めてブラウザー上で動作する設計にした。すでに一部の小学校で試験的に導入されており、23年1月にも教育機関に無償で提供される予定だ。

 KONAMIが無償化してまで桃鉄教育版に取り組むのには、将来のファンを育成したいという狙いもある。ゲームといえば子供が大好きというイメージがある人もいるかもしれないが、実は「ゲームで子供(の人気)を獲得するのはとても難しい。当たると大きいものの、狙って狙えるものではない」と岡村氏は話す。

 10年前と比べても、子供を取り巻く情報環境やゲーム環境は大きく変化した。現在の子供たちは、幼い頃からYouTubeやTikTokといった動画サイトに親しんでおり、そもそも楽しみの選択肢が多い。さまざまなエンターテインメントで、自由に使える可処分時間の奪い合いが起こっている。

 また、ゲームに関しては、YouTuberなどが大人向けのゲームを楽しむ姿を見ており、子供だからといって子供向けのゲームに興味を持つわけではない。むしろ“子供だまし”だと敬遠する傾向さえある。しかも『フォートナイト』や『マインクラフト』といった近年、子供に人気のゲームには、無料でプレーできるものも多く、選択肢は広がってきた。KONAMIプロモーション企画本部の中井遥子氏は「無料で楽しめる遊びの選択肢が増えたことで、5000~6000円のソフト1本を購入してもらえるまで持っていくのが難しくなっている」と語る。

 こうした環境の中、「学校で友達とゲームをして盛り上がった経験が強く記憶に残れば、そのあとでお父さんやお母さんと遊んでみたい、高校生や大学生になったときに友達と遊んでみたい、といった気持ちになるのではないか」と中井氏。岡村氏も「学校でやったゲームなら親も買いやすい。将来に桃鉄のブランドをつなげるため、長期的なビジョンを見据えている」と話す。

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