AIはどこまで働いてくれるのか? 第1回

人間が入力したテキストを基に高解像度の画像をつくり出す「画像生成AI(人工知能)」。口火を切った「Midjourney(ミッドジャーニー)」に続いて登場した「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」のAIモデルが無料配布され、「最先端AIの民主化」が一気に進んだ。広告コピーを生成するAIも脚光を浴びるなど、マーケティング分野で活用が進む。一体、どこまで人間の仕事を助けてくれるのか。

左がフリー素材を使った従来のバナー広告、右がMidjourneyで生成したロボット画像に差し替えた広告
左がフリー素材を使った従来のバナー広告、右がMidjourneyで生成したロボット画像に差し替えた広告

 従来のバナー広告で使っていたロボットのフリー素材を画像生成AIの「Midjourney(ミッドジャーニー)」で作成した画像に変更。メインのキャッチコピーや構図は大きく変えずに2022年9月にFacebook広告で運用したところ、CTR(クリック率)が約1.8倍にアップした――。

 そんな最新の結果を披露するのは、ガラパゴス(東京・千代田)の中平健太社長だ。同社は、AIが収集する毎月200万件以上のLP(ランディングページ)やバナーのデータ分析に基づいた広告クリエーティブ制作など、Webマーケティングの支援サービス「AIR Design(エアーデザイン)」を展開する。今回の広告テストについて、「表示回数などを同一にした厳密なA/Bテストではないものの、優位な差は確認できたといっていい結果だった」と中平氏は話す。

 画像生成AIは膨大な画像と言語のペアの学習済みモデルで、人間が入力するテキストから驚くほど精度の高い絵画や画像を数十秒足らずでつくり出せる。全く絵心がなくても、プロ並みのクリエーティブな領域へ踏み込めるとあって、大きな話題を呼んでいる。

 Midjourneyの他にも、米テスラのイーロン・マスク氏ら投資家が設立したAI研究団体のオープンAI「DALL-E 2(ダリ・ツー)」や米グーグルの「Imagen(イマジェン)」など、この半年で様々な画像生成AIが登場。そして22年8月末には、英スタビリティーAIの「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」がオープンソース形式で公開され、個人の“お絵かきAI”としてだけではなく、ビジネス利用を探る動きに拍車がかかった。

 そうした中、ガラパゴスが試しにMidjourneyで画像生成を行い、Facebookで運用したバナー広告のビフォー・アフターが、冒頭で紹介した画像だ。以前、活用していたロボット画像はフリー素材だったため、同業他社が似たようなクリエーティブを採用し、広告展開されてしまっていた。そこでガラパゴスのマーケティングチームは、まずStable DiffusionのWebサービスである「DreamStudio(ドリームスタジオ)」で、新たなロボット画像の生成にトライした。

 ところが、なかなか以前のロボット画像のような「かわいらしさ」が再現できなかった。生成できたのは、下の画像のような怖いイメージのロボット画像だ。

DreamStudioで生成したロボット画像
DreamStudioで生成したロボット画像

画像生成AIを操る「呪文」、使いこなしのコツは?

 そこに“救世主”が現れる。15年ごろから画像生成AIの研究を行っており、Midjourneyに関しては22年7月にチャットツールの「Discord(ディスコード)」経由でオープンベータ版が公開されて以降、自社サービスへの活用に向けて様々なテストをしているガラパゴスCOO(最高執行責任者)の島田剛介氏だ。

 「Midjourneyなどでイメージに近い画像を生成するには、入力する英語テキストの選定が重要。膨大な画像空間の中にあるイメージを適切な座標を指定して探し出す感覚」(島田氏)

 こうしたテクニックは「プロンプトエンジニアリング」といい、日本では入力するキーワードを「呪文」と呼ぶ人もいる。テキストによるAIとの“対話”は現状、職人芸といってもいい領域なのだ。

 島田氏が、バナー広告の画像作成に当たってまず行ったのは、どんな画像をつくりたいのか、マーケチームの方向性の確認だ。画像のモチーフ、テイスト、構図、背景指定といった視点で聞き取ると、「かわいい」「リアル」「正面」「顔メイン」「白抜き」というキーワードが浮かび上がった。

 これらを英語で指定していくのだが、その際のポイントは最初から多くの“呪文”を入力しないこと。どの“呪文”が変数となってどのように生成画像のニュアンスが変わるのか、A/Bテストを繰り返しながら絞り込んでいくことが重要だ。

 そして、“呪文”にはクセもある。先述した通り、今回のロボット画像ではかわいいニュアンスの表現が難しかった。英語で表現するなら「Cute」と思いがちだが、「試行錯誤する中でたどり着いたのは、『Chibi』というキーワードだった」(島田氏)という。Chibiはアニメなどの世界的な普及で、「小さくてかわいい」といった意味合いで、“英語”として受け入れられているようだ。

島田氏がMidjourneyで作成したロボット画像
島田氏がMidjourneyで作成したロボット画像

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