※日経エンタテインメント! 2022年9月号の記事を再構成

テレビ業界でディレクターや演出家として活躍し、そのノウハウを生かしてYouTubeでも活躍する、元テレビマンクリエーターが増えている。背景には、YouTubeで配信される動画に、よりクオリティーが求められ始めた結果、テレビ制作のノウハウが生かしやすくなったことなどがある。成功例は年々増えており、この流れは今後も続きそうだ。

 YouTubeでも活躍するテレビマンクリエーターたち。そのタイプは、大きくは2つに分かれる。芸能人やタレントと組むパターンと、独自のチャンネルを立ち上げるパターンだ。

 前者では、『「ぷっ」すま』などのディレクターを経て、現在登録者数が350万人を突破する江頭2:50の「エガちゃんねる」で演出を担当する藤野義明氏が代表例。石橋貴明の「貴ちゃんねるず」(166万人)を手掛けるマッコイ斎藤氏も、『とんねるずのみなさんのおかげでした』の総合演出を務めていた経歴を持つ。

 一方、元読売テレビのプロデューサーの平山勝雄氏は、日本No.1の野球チャンネル「トクサンTV」(70万人)をはじめ、複数のチャンネルを立ち上げる。また、ドキュメンタリーチャンネル「街録ch-あなたの人生、教えて下さい-」(96万人)を担当するのは、元『笑っていいとも!』でADなどを務めていた三谷三四郎氏だ。

 そこでここでは藤野氏と平山氏に、YouTubeを手掛けた経緯と、YouTube動画作りでのこだわりについて聞いた。最初に登場するのは「エガちゃんねる」の藤野氏だ。

エガちゃんねる EGA-CHANNEL
エガちゃんねる EGA-CHANNEL
エガちゃんねる EGA-CHANNEL
週2回、深夜2時50分に公開中。写真は、初めてダブルチーズバーガーを食べたときに素直な感想が出てしまったシーン。忖度のない商品レビュー動画は、人気コンテンツの1つに。

 今やテレビでは見る機会が減ってしまった過激なお笑いで人気を集める江頭2:50の「エガちゃんねる EGA-CHANNEL」。2020年1月にスタートし、登録者は350万人に達する。それを共に育て上げたのが、ばんぺいゆ代表取締役の藤野義明氏。『「ぷっ」すま』『さまぁ~ず×さまぁ~ず』などを手掛けてきた元テレビディレクターだ。

 2018年3月末に、江頭さんがよく出演していた『「ぷっ」すま』『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてる!!』が一気に終了し、テレビ出演が激減していたんです。僕は定期的に江頭さんと飲んでいたので、その度に「伝説の芸人がこのまま消えてはいけない。何かしら番組を取ってきます」と話していました。ただ、コンプライアンスの波が強まるなか、ネット配信番組でも江頭さんが輝くような企画は通らず、「YouTubeをやりましょう」と、江頭さんを口説きました。

 コンセプトは「ただただ笑わせたい」、それだけ。僕も江頭さんも、シンプルに見た人を笑わせたいという気持ちが強いんです。その笑わせ方のバリエーションをいろいろ見せるなかで、ちょっとした感動が生まれる瞬間があるのかなと思っています。

 体を張ったドロ臭い笑いが、最新メディアのYouTubeで息を吹き返す。動画を作る上で、テレビとは違った魅力について聞くと、「自己責任の世界なので、腹さえくくれば何でもできること」と返ってきた。

 テレビは、スポンサーやコンプライアンスなど、様々な縛りの中で作る必要があります。もし騒動を起こしたら、とてつもない数の人に迷惑がかかってしまう。その点、YouTubeは僕と江頭さんが、収益を上げるのを諦めたうえで、謝れば済みますからね。間違ったことをするのはよくないと思いますけど、自分たちの中で面白いと思ったことができるのは魅力ですよね。

江頭さんだからこそ言える

 昨年7月に、江頭さんが初めて、ある人気ファストフード店のハンバーガーを食べる動画を出したんですけど、「ダブルチーズバーガー」を食べて「全然美味くない」「犬が食いそうな肉」とコメントして炎上しました。でもこれは、多少オーバーかもしれませんが、江頭さんだからこそ言える本音レビューだし、絶対テレビじゃ流すことができないですよね。再生数は昨年の動画で最多の680万回を超えています。また僕らの場合は、内容が過激すぎて広告収入がつかない動画が約3割ありますが、面白さを担保するためには仕方がないと思っています。

 YouTubeには「案件動画」と呼ばれる、企業の商品やサービスを動画内で紹介することでプロモーション料をもらうタイプの動画がある。一般的には無駄な内容になりがちだが、「エガちゃんねる」では逆に人気動画となっている。

 視聴者から嫌われがちな「案件動画」ですが、どうすれば面白くできるかを江頭さんと話し合って、「案件動画こそ、広告がつかないくらい攻めた動画にしよう」となりました。プロモーション料が入るので、はなから広告審査には通らなくていいという考え方です。通常回よりも攻めるので再生数は回り、クライアントにも喜んでもらえますしね。これまでにも、エアロバイクの案件で、こげばこぐほどカーテンが上がり、奥にいる水着の女性が見えるなどの企画をやりました。とはいえ、案件動画をやりすぎてもとは思っているので、月2本までと決めています。

 YouTubeには動画の分析機能「YouTubeアナリティクス」や、視聴者が感想を書き込める「コメント欄」がある。しかし、そうした機能には頼りすぎることなく、テレビ制作の現場で培った経験を信じ、独自のロジックでヒット動画を生み出し続けている。

 他の方に聞くと、「アナリティクス」で離脱率などを気にされているようですが、正直ほとんど気にしていないです。僕らの基準はあくまでも、面白いか面白くないか。やはり1番気になるのは「コメント欄」ですね。そこにどれだけ、「笑った」というコメントがあるかで判断しています。

 今後の目標としては海外進出。コロナ禍が落ち着きを見せたら、ぜひ挑戦したいです。

藤野義明(ふじの・よしあき)
1978年生まれ、神奈川県出身。テレビ番組制作会社「ケイマックス」でディレクターとして、『「ぷっ」すま』などを担当。2011年に制作会社「ばんぺいゆ」を設立。「エガちゃんねる」では、番組を進行する天の声や、「ブリーフ団D」として出演する
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