※日経エンタテインメント! 2022年9月号の記事を再構成
大学時代の同期で結成した3人組動画クリエーターの「Kevin’s English Room」は、日本人の知らないアメリカ文化や英語に関する勘違いや思い込みを、コントや掛け合いでエンタテインメント化するチャンネル。現在、YouTubeの登録者は143万人を突破。育った環境の異なるケビン、かけ、やまの3人がそれぞれの意見をぶつけ合い、クスッと笑えるのが人気の秘密だ。複数のSNSを駆使しながら、最近ではショート動画投稿機能の「YouTubeショート」(以下、ショート)も効果的に活用する彼らに、動画との向き合い方について聞いた。
2021年7月に短尺動画を撮影・編集できる機能として日本でも導入された「YouTubeショート」(以下、ショート)。立ち上げからわずか1年で、1日あたりの再生数は全世界で300億回を超え、月間ログインユーザー数は15億人にまで成長している。
ショートの特徴は、「動画の尺が最大60秒」「動画が縦型」であること。TikTokやInstagramのリール機能に近く、縦スクロールでサクサク見ることができるのも利点の1つだ。
またショートは、自動再生システムを採用しており、視聴者はタップをして再生する必要がないため、動画制作者は不特定多数のユーザーにリーチしやすい。その結果、動画やチャンネルを知ってもらう機会が増え、登録者数を伸ばす有効な手段となっている。
今後は、「マルチフォーマットクリエーター」と呼ばれる、長尺動画、ショート、ライブ配信、オーディオといったYouTubeのあらゆるフォーマットを駆使するYouTuberが、注目の存在となっていきそうだ。
SNS上で存在感を高めるためにYouTubeを活用
かけ 2019年12月に、ほぼ同タイミングでTikTokとYouTubeを立ち上げました。最初から明確に動画の内容を分けていて、短尺のTikTokは海外の文化の違いなどをミニコントっぽく仕上げたもの。一方、YouTubeは長尺なので、3人でいろんなトークや議論をするなかで、僕らの関係性や人間性が伝わるものにしようと考えていました。
ケビン 最初にバズった動画はTikTokでしたが、SNS上で存在感を高めようと考えた時に、YouTubeを通じて僕ら3人のパーソナリティーも知ってもらう必要があるんではないかと。面白いコンテンツを提供するだけでなく、グループ自体へのファンの熱量も高めていきたかったんです。
やま 動画を作っていて、3人だからこそ出せる強みもあります。ケビンはアメリカで生まれ育ち英語が堪能で、かけちゃんは日本育ちと、視聴者の皆さんに近い存在。そして僕はその中間くらいの立ち位置。それぞれ育った環境が異なるからこそ、いろんな意見が生まれるんです。
かけ 1人語りだと押し付けがましくなったり、2人だと討論が白熱しすぎることもある。ただ3人だと、1人がバランスを取るようになるんですよね。ケビンとやまちゃんが海外話で盛り上がっている時は、あえて僕は日本人ならではの視点の意見を出して、より視聴者の方が見やすい空気感を作れているのかなと思います。
ショートは本動画を切り出したものではなく
21年7月にYouTubeの新機能として登場したショート。新規の視聴者に届きやすく、しかも再生数が伸びると、投稿数が急速に増えている。彼らも、「日本とアメリカのプレゼントの開け方の違い」などをコント風のショート動画として紹介しているが、明確な戦略を持って臨んでいる。
かけ あくまでもショートは、長尺の本動画を見てもらうための導線として活用しています。例えば、ショートに「日本人が訳を間違いやすい英文」をコント形式で紹介し、本動画のほうではその内容を3人のトークで掘り下げていくといった感じです。
ケビン なので、ショートは本動画を切り出したものではなく、ちゃんと別に1本の動画を撮影しています。これはあくまで僕たちの考えなんですが、切り出したものだと未完結の動画になってしまうため、視聴者にネガティブな印象を与えかねません。
かけ TikTokで短尺動画を作ってきたノウハウもあるので、ショートは、確実に追い風になっていると思いますね。アルゴリズム的にも、以前に比べて露出が増えているように感じます。
やま それで言うと先日、電車で隣に座った人が、ちょうど僕らのショートを見ていました(笑)。
かけ あと、見てもらいたいのはあくまでも本動画なので、ショートは上げすぎないようにもしていて。いわば必殺技のような使い方をしています。
ケビン もともと「3人でチャンネル登録者数100万人を目指そう」など、大きな野望を掲げてスタートしたわけではないんです。けれど短期的な目標としては、アメリカに行って撮影をしてみたいですね。
やま 同時に僕らは大学時代からの友達なので、これからも仲良く活動を続けていけたら最高かなと。
かけ 現状、“100%バズるけど準備が死ぬほど大変”という企画を何個か思いついています(笑)。昔と違って、大掛かりなセットを組んだ撮影をすることも可能になったので、今後はそういう企画にも挑戦していきたいです。