※日経エンタテインメント! 2022年9月号の記事を再構成
芸人が相次いでYouTubeに参入し、最初に盛り上がりを見せたのが2019年~20年ごろ。今では多くの芸人が当たり前のようにチャンネルを持つようになった。人を楽しませる地肩があるため、エンタテインメントとしてクオリティーの高いコンテンツがそろっているのが芸人YouTubeの特徴。現在、企画ものを展開するかまいたち(登録者数177万人)、チョコレートプラネット(169万人)、霜降り明星(170万人)らがトップランナーだが、全体の傾向としては、コント動画をアップしている芸人の存在感が増している。
特に勢いがあるのがジェラードン(89万人)。登録者数でいうと、野沢雅子のモノマネ動画をアップしているアイデンティティ(82万人)や、企画ものが中心のさらば青春の光(80万人)と同等のクラスになる。現在はツッコミの海野裕二が休養中だが、YouTubeではもともと、芸達者なかみちぃとキャラクターの濃いアタック西本のボケ2人が中心で展開していたこともあり、コント芸人としての実力を存分に発揮。「貫禄ありすぎて、父親と間違われる引きこもり生徒」や、「デスノート拾ったけど、使い方がわからないバカ」など、見たら忘れられなくなるキャラコントでファンを増やしている。
『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジ系)など、テレビ露出も増えているレインボー(73万人)も、着実に登録者数を伸ばしている1組。ドラマを見ているかのような演技力の高さで、「すぐ気まずい空気になるカップル」や「エロい雰囲気になりたかったのに全力で漫談してくる女」など、笑えるネタからシリアスなものまで、リアルな会話のやり取りを8~9分のコントで見せている。
同期芸人3人の戯れが人気
男子同士の戯れ動画では、ガーリィレコード(100万人)が代表格だが、近年、同期芸人3人による板橋ハウス(40万人)が台頭。登録者数では、見取り図(41万人)に並ぶ。ルームシェアをしている軟水の住岡、ピュートの竹内、めぞんの吉野の日常をのぞくような感覚で、3人のおしゃべりやふざけ合う姿が見られる。芸人であることを名乗らないまま、TikTokがきっかけで若い層を中心に存在が広まったが、3組ともぼる塾(23万人)らと同じ「神保町よしもと漫才劇場」に所属している。お笑いの能力が高く、「カッコよく電気消す選手権」や「ダサく部屋から出る選手権」など、遊びの延長の何気ない大喜利もさすがのレベルの高さ。
男女コンビでは、エレガント人生(24万人)の注目度が増している。山井祥子はTikTokに、いろいろなタイプの女子の“あるあるモノマネ”をアップしており、そちらはフォロワー数35万人。YouTubeではカップルネタなど、男女コンビならではのコント動画をほぼ毎日更新している。祥子の憑依力と、いかにもいそうな中込悠の優男ぶりが光る。同じ男女コンビではニッキューナナ(24万人)も人気で、こちらは普段の芸風と同じく下ネタに特化している。
特技を生かしたものだと、ロバートの馬場裕之による料理のチャンネル(95万人)などがあるが、吉本新喜劇に所属する松浦景子(25万人)は、バレエコンクールで日本一になったこともあるバレリーナ芸人。自ら実演する「細かすぎて伝わらないバレエあるある」を中心にアップしており、バレエファンから支持を集めている。
このほか、「新潟県住みます芸人」として新潟を拠点に活動しているチカコホンマは、世間的な知名度は低いが、YouTubeチャンネル「チカポン」の登録者数は22万人。ぽっちゃり体型を生かしたおしゃれコーディネートや、婚活・合コンのエピソード、飲酒や大食いをする姿、休日の1コマなどをアップしている。YouTuberとして存在感を示してから、テレビの世界に呼ばれるようになったフワちゃん(89万人)やエミリン(159万人)のケースもあり、今後全国区の芸人として飛躍する可能性もあるだろう。