
海外に商圏を広げたい。だが日本で売っている商品のままで勝負できるのか。そんな悩みから海外への進出をためらっている企業も多い。海外進出の成功のポイントとは何か。海外進出のコンサルティングを行う米BOUS(ボース)の代表取締役、坪内小百合氏に話を聞いた。
BOUS代表取締役
――BOUSは日本企業の米国進出をサポートしているとのことですが、具体的にどのようなサービスですか。
坪内小百合氏(以下、坪内) 私たちの思いは「日本製品の良さを世界へ伝えたい」。海外進出を成功に導くために、私たちはフェーズを3つに分けて支援します。フェーズ1では市場調査を行います。当たり前ですが、日本と米国は市場がまったく異なります。いくら良い商品でも市場が違うことを認識しないと、うまくいかないからです。マクロ、ミクロの市場分析、競合分析をしたうえで、自社の強みを生かした戦略を策定します。実はこの市場調査は非常に大事なポイントで、しっかりと時間をかけたクライアントが実績を上げています。
そのうえでフェーズ2の商品戦略、ブランディング戦略を策定し、実行に移します。ここでポイントなのは米国の消費者にどう分かりやすく伝えていくか。例えば日本だと「ふわふわ」「もちもち」と言うと同じことを想像できますが、米国は住む場所によって言葉や考え方が違ったりするので、同じことを想像するのは難しい。だから私たちはマクロ市場をではなく、ニッチ市場を攻める戦略を立てています。ターゲットとすべき人がどんな価値観を大事にしており、どんなライフスタイルを送っているのかなど、細かく規定し、そのターゲットに伝わる写真や動画、言葉を組み立てていきます。コミュニケーションをいかにデザインするかが、とても重要です。
フェーズ3でBtoBおよびDtoC市場に対して、セールスやマーケティング活動を実行していきます。そして大事なことは、フェーズ1~3の活動は一度で終わりではなく、ぐるぐる回していくこと。市場は常に変化しているからです。
――日本企業の海外進出状況について教えてください。
坪内 1つ言えるのは、ものづくり系よりも食品系の企業の進出が増えていること。そしてもう1つが、最近は小さな企業よりも、ある程度資本力のある規模の大きな企業の進出が目立っていることです。
1つの情報が海外バイヤーの反応を変えた
――サポート企業の中で成功事例をご紹介ください。
坪内 伝統的な漆塗りの技術を基に樹脂製漆器を手がけてきた竹中(石川県加賀市)は、9年ほど前に米国に進出したいと社長が相談に来られたことからのお付き合いです。竹中はOEM製造がビジネスの核で、自社製品は昔ながらのお弁当箱を製造していました。私たちが着目したのが、漆塗り職人によるウレタン塗装の技術。発色がきれいなので、米国のトレンドカラーでバリエーションをそろえることを提案しました。それに伴い米国向けに形やデザインを一新。またブランディングやマーケティングも、ターゲットとする米国の教養があり、リベラルなZ世代やミレニアルズに刺さるようにがらりと変えました。
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