かつての日本では、酒や米、しょうゆや油などさまざまな物が量り売りで売られており、升は欠かせない商売道具だった。今では升は物を量る道具としてはほとんど使われないが、大橋量器(岐阜県大垣市)は現在の升の主用途である酒器にとどまらず、インテリアや雑貨市場に幅広く商品を展開し、海外展開にも積極的に取り組んでいる。

日本では不評だった「カラー枡」だが、ニューヨークの展示会に出品すると注目の的に
日本では不評だった「カラー枡」だが、ニューヨークの展示会に出品すると注目の的に
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 升の生産量日本一、シェア80%を占めるのが岐阜県大垣市だ。大橋量器代表の大橋博行氏が外資系IT企業を退職し、家業に入ったのが1993年。その頃の1年の売上高は5600万円だった。「自分が中学生だった頃、『ウチの会社の売り上げは1億円』と聞いていたのでほぼ半減していた」(大橋氏)。しかも、当時大垣に7社あった升専門メーカーの中で同社の売り上げはほぼ最下位だった。

 「当時はお祝い事などでまだ升の需要は高く、酒造メーカーに営業に行き、鏡開き用やノベルティー用の名入れの升などの需要を開拓し、売り上げを伸ばせる時代だった」。4年ほどで売り上げは8000万円まで回復した。しかし5年後には7000万円台後半、6年後には7000万円台前半と、どうやっても売り上げの低下が止まらなくなった。「世の中の動きを見ると、飲酒やお祝いの形式が多様化しており、また飲酒に対する目も厳しくなった。開店祝いで鏡開きをして昼間から酒を振る舞うこともなくなった」(大橋氏)。これまでの升では売れなくなる時代が目の前に迫っていることを実感したという。

デザインで海外にチャレンジ

 そこで、「我々の技術でほかの物は作れないか、そんなことを考えて試行錯誤を続けた結果、普段の生活でも使えそうなものができてきた」(大橋氏)。カラフルな升やオーガナイザー(収納具)的な使い方ができる升など、さまざまなデザイン面でのチャレンジが実を結んできた。

 「海外で升を売りたいという思いはもともと強く、そのためには世界の中心の米国の中心であるニューヨークに出ていこうと考えた。またニューヨークには日本人も多く、日本的なものを受け入れやすい下地もあるのではないかというもくろみもあった」(大橋氏)。そこで、これまでに作ってきた升を2011年の「ニューヨーク国際ギフトフェア(現・ニューヨークナウ)」に出品した。その中で注目を集めたのが「カラー枡」だった。

 これは以前に東京ギフトショーにも出品したが、日本のバイヤーには全く評価されず、商品ラインアップからは下げていたものだ。しかし、ニューヨークの展示会の前に日本貿易振興機構(JETRO)の現地事務所に相談に行ったところ、「これは絶対にラインアップに入れておいたほうがいい」というアドバイスをもらって出品。一番の注目の的になったのだ。

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