世界に売るデザインの力 第2回

ゲーム市場は全世界で年々成長を続け、2021年は20兆円規模の市場になった。21年のセガ(東京・品川)の家庭用ゲーム販売金額は海外が約7割を占める。その人気をけん引するタイトルの1つが、海外、特に米国での人気がすさまじい『ソニック』シリーズだ。

2022年11月8日に世界同時発売予定の最新作『ソニックフロンティア』では、シリーズの売りである「速くてかっこいい」アクションで、主人公のソニックが広大な世界を駆け巡る
2022年11月8日に世界同時発売予定の最新作『ソニックフロンティア』では、シリーズの売りである「速くてかっこいい」アクションで、主人公のソニックが広大な世界を駆け巡る

 『ソニック』シリーズは、セガが発売するゲームソフト。1991年に誕生し、全世界で累計約15.1億本/DL(注1)を売り上げる人気作だ(2022年3月時点)。同シリーズの主人公であるハリネズミの「ソニック」は、セガグループの看板キャラクターでもある。そのため、「ゲームはプレーしたことはないが、知っている」という人も多いのではないだろうか。実はこのソニックシリーズは、日本以上に海外、特に米国での知名度が高いのだという。ゲームはもちろん、映画やアニメ、コミックなども人気で、ソニックというキャラクター自体も親しまれているようだ。

(注1)Free to PlayタイトルのDL数を含む

 セガのソニックシリーズ・プロデューサーである飯塚隆氏は、米国人にとってのソニックは「日本文化で例えると縁日のお面になるようなキャラクター」と話す。例えば、米国のフェスティバルなどでは射的などのアーケードゲームが定番なのだが、その景品としてソニックのぬいぐるみが並んだりするという。

 米国におけるソニック人気を語るうえで分かりやすいのが、ハリウッド映画『ソニック・ザ・ムービー』シリーズの大ヒットだろう。20年に公開された1作目は、全米興行収入1億4900万ドルを突破し、北米でゲーム原作映画史上最高の興行収入を記録した。全米では22年4月にその続編が公開され、公開約2カ月で前作の収入を上回る1億9056万ドルを達成した(注2)。前作が記録していた北米でのゲーム原作映画史上最高の興行収入を塗り替える形になった。

2作目の映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』の全米の興行収入は、公開約2カ月で前作『ソニック・ザ・ムービー』を上回る1億9056万ドルを達成した
2作目の映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』の全米の興行収入は、公開約2カ月で前作『ソニック・ザ・ムービー』を上回る1億9056万ドルを達成した
(注2)全世界で22年3月から順次公開。全米は4月、日本は8月から公開した

 ソニックシリーズは、なぜここまで米国でヒットしたのだろうか。実は、同シリーズは初めから米国市場を見据えて開発されたという。米国でのソニック人気は、1991年に発売した1作目『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』までさかのぼる。

 90年代は、任天堂の「スーパーファミコン」が一世を風靡した時代だった。セガも自社ハードの「メガドライブ」で任天堂と競合していたが、その牙城は崩せなかった。「このまま日本だけで戦っていても埒(らち)が明かないと考え、戦いの舞台を米国市場に移すことにした。まずは米国で大ヒットするゲームを作り、それを逆輸入する形で日本とアジア、ヨーロッパにも広げていこうと考えた」(飯塚氏)

米国人にウケる「かっこいい」とは?

 当時の米国でも日本のゲームは市場を席巻していたが、ブームの中心は小さな子供たちにとどまっていた。大多数の米国人にとって「ゲームは子供が遊ぶもの」というイメージで、若者や大人には浸透していなかったのだ。そこで注目したのが、13~19歳のティーンエージ層だった。「米国のティーンエージ層が好むのは、パーティーやダンスなどアクティブで外向的な遊び。キャラクターからゲームシステムに至るまで、低年齢層とはまったく別のアプローチが必要だろうと感じた」(飯塚氏)。そこで着目したのが、彼らの重視する「かっこいい」という感覚だった。

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