
海外企業から注目される早道の1つは、さまざまな国際イベントに出展することだろう。2022年のイタリア「ミラノサローネ国際家具見本市」に積極的に出展した細尾(京都市)と檜創建(岐阜県中津川市)に、海外展開の極意を聞いた。両社に共通するのは和のテイストを生かしながらも、そこに固執せず、柔軟に対応する姿勢だ。
少子高齢化でシュリンクする国内市場。日本企業は今まで以上に真剣に、海外市場へ目を向ける必要がある。ただ、優れた素材や技術を持つ日本企業であっても、海外市場を攻略するのは容易ではない。ハードルを越えるには、海外の消費者を理解し、プロダクトはもちろん、コミュニケーションを含めたあらゆる顧客接点で強く訴えるマーケティングとデザインの力が不可欠だ。
今回の特集では、高品質な日本の製品を世界にアピールするためのマーケティングとデザインを、事例を基に考えていく。第1回として、ミラノサローネを舞台に世界へと販路を広げる日本の伝統工芸2社を取材した。
伝統的な西陣織を手がけてきた細尾(HOSOO)の創業は1688年という。西陣織の帯幅は約32センチメートルとされるが、世界のテキスタイルの標準幅である150センチメートルに広げた西陣織を2010年に開発。対応する独自の織機も作った。
以来、世界のマーケットに向け、西陣織をベースにした斬新なデザインのテキスタイルをさまざまな海外ブランドに提供している。インテリアやファッションのほか、アートなど着物や帯を超えた業種と協業しながら、新しい価値づくりへと取り組んでいる。
当初は失敗続きだった
そんなHOSOOも、海外展開を狙った当初は失敗続きだったという。西陣織の国内市場が縮小し、海外展開に活路を求めたのは06年から。「ミラノサローネ」ではなく、パリで開催されている「メゾン・エ・オブジェ」に参加。西陣織を生かした和柄の生地でソファーを作り、展示したが売れなかった。課題は生地の幅にあった。ソファーの大きさに合わず、外観が継ぎ目だらけだったからだ。ソファーの知識もないのに、西陣織で何らかの商品に仕立てないといけないのでは、という意識もあった。
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