国内外でダークパターンの抑止につながる法整備が進む。だが、適法であっても、ダークパターンに当たるケースは多い。法に触れないUI(ユーザーインターフェース)を提供することは企業に求められる最低限のラインである。本連載の最終回では、クラウド型の会計・人事労務ソフトを開発するfreeeの事例を参考に、サービス提供側である企業が消費者に対してより誠実であるために取り組むべきポイントについて学ぶ。
ダークパターンは「人をだますデザインである」と説明されることから、デザイナーによってつくられると誤解されがちだ。しかし、連載の第3回で「目標優先型」として解説したように、組織の目標や環境によって、厳しい条件が課せられることで、デザイナーが結果としてダークパターンに手を染めてしまうことも多いと予想できる。
例えば、あるサービスにおいて「月間の電話の問い合わせ件数を半分以下に減らすこと」という数値目標が掲げられたとする。この目標達成を厳しく求められた場合、「問い合わせ件数を減らすこと」が目的化し、電話番号を顧客に見つかりづらい位置に表記したり、文字を小さくしたりする改修をしてしまう恐れもある。つまり目標だけにとらわれてしまうと、顧客の体験がないがしろになる恐れがある。それが結果的にダークパターンとなってしまうというわけだ。
何か施策を考えるときには、本当に顧客にとってその方法がベストなのかを多角的に検討すべきだ。問い合わせ件数を減らしたいのであれば、よくあるご質問を見直して、電話で多く寄せられる問い合わせを自己解決できるように充実させるなど、他の施策を検討してもいいだろう。
また、「問い合わせ件数が多いこと」ではなく「問い合わせを受けた内容をサービス改善に生かせていないことが課題なのではないか」と目標自体を見直すことも可能である。そもそも設定されている目標が表面的ではなく本質的な課題を捉えているのかどうか、関係者全員で見直してみることが必要だ。ダークパターンはデザインだけでなく、サービスのあり方や企業姿勢の問題として捉え組織全体で防止に取り組む必要がある。
組織全体で顧客を優先に考える基準を設定
では、組織全体でダークパターンの防止に取り組んでいくにはどうすればよいだろうか。その1つの解として、各事業者が顧客に提供すべき価値や、その逆に抑止すべき行動などについて、自分たちなりの基準を定めることが挙げられる。その基準によって、サービス開発に当たっていくことが必要だと筆者は考えている。
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