
コーセーが展開する美容ブランド「ジルスチュアート ビューティー(以下、ジルスチュアート)」のInstagramアカウントは、65万4000人超(2022年10月時点)のフォロワーを抱える。戦略的に活用することで、顧客対象層の拡大や、ライブ配信では1回で公式ECサイトの売り上げが数十万円増加するなど、事業貢献につなげてきた。同社のInstagram運用の肝は、独自開発した2つのKPI(重要業績評価指標)を算出する計算式にある。
「今、ジルスチュアートのInstagramアカウントには約65万人のフォロワーがいるが、そのうちのアクティブ率は、従来のKPIでは測りきれなかった。当社のアカウントをフォローしたか覚えていない、あるいは自身のアカウントは残したままだがInstagramの利用をやめてしまった人などがいる。アクティブ率を考慮しないと、『本当のエンゲージメント』は測れない」
コーセーの宣伝部宣伝企画・PR二課の大江茉莉亜氏は、Instagram運用の課題をこう語る。フォロワーが多くても、日ごろからInstagramを利用しない層が増えれば、それだけ投稿に対する反応率が下がってしまう。ジルスチュアートに関心が高く、かつInstagramのアクティブ利用者がフォロワーにならなければ、徐々にアカウント運用の効果は低下する可能性もある。
そこで、コーセーでは独自の計算式を開発し、アクティブ率を取り入れたKPIを成果指標に用いている。ジルスチュアートのInstagram運用におけるKPIは大きく2つ。「エンゲージメント率」と「UGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ=ユーザー生成コンテンツ)の投稿数」だ。
このうち、エンゲージメント率の算出方法に工夫がある。一般的な算出方法は投稿に対する「いいね!」「コメント」「保存」の合計を、インプレッション(投稿が表示された回数)またはリーチ(投稿を見たユニークアカウント数)で割って算出する。しかし、この従来の算出方法には「アクティブ率」が加味されていない。
コーセーはこの一般的なエンゲージメント率の算出方法に加えて、アクティブ率を測る2つの指標を算出する独自計算式を2年前に開発。より、正確なエンゲージメント率を測定する指標として運用に用いている。
本題に入る前に、ジルスチュアートをご存じない方に、どのようなブランドか説明しよう。ジルスチュアートはアパレルブランドから始まり、美容品へと事業領域を拡大した。このうち化粧品のライセンス権をコーセーが取得し、国内で展開する。
美容ブランドは、宝石のような華やかなビジュアルで、10代後半~20代前半の若年層を中心に支持されている。販路の中心は百貨店内にある化粧品コーナーだ。デパートで展開される高級化粧品ブランドである「デパコス(デパートコスメ)」の一つとして知られる。
Instagramアカウントの開設は、14年8月。ジルスチュアートは、コーセー傘下のコスメブランドの中でもいち早く活用を始めた。その目的は、「いかにフォロワーのブランドロイヤルティーを上げ続けるか」にある。Instagramのあらゆる機能を駆使し、ファンが最もジルスチュアートを支持するポイントである「かわいらしい世界観」の演出に励むことで、順調にフォロワー数を拡大してきた。
アクティブ率を加味した2つの独自計算式を公開
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