今、マーケターの注目はZ世代に集まっている。しかし2030年代に向けて生活価値観や消費行動が変化していく中、その下に育つα世代にも目を向けたい。「理想の未来の家と暮らし」をスケッチすることで見えた、Z世代とα世代の特性の違いを探る。

ぐんま国際アカデミー初等部のα世代と小々馬ゼミのZ世代が、2030年の理想の生活をスケッチ。世代観の特性の違いを探った
ぐんま国際アカデミー初等部のα世代と小々馬ゼミのZ世代が、2030年の理想の生活をスケッチ。世代観の特性の違いを探った

なぜα世代に注目するのか

 私の研究室は2021年から、Z世代とα世代の価値観と消費行動の調査研究をインテージと続けています。若い世代の行動の中に見え始めている未来社会のエッセンスを見つけて、マーケティングが向かうべき進化のベクトルを洞察することが目的です。

 きっかけは、20年を境として、それまで最大の消費ボリューム層であった団塊世代が生産労働人口(15~65歳未満)から卒業していき、25年にはミレニアル世代とZ世代の人口合計が、上の世代を追い抜き世代交代が進むこと。2030年代に向けて、社会の空気が変わり、生活価値観や消費行動も変わっていくと考えたことでした。

 そして、α世代に興味を抱いたのは、Z世代のゼミ生から「小中学生の弟や妹は、YouTubeでゲーム実況を視聴していて、オンラインゲームの中で過ごす時間が長く、自分たちとは違う世代です」という声を多く聞いたことでした。

 現在、マーケターの関心はZ世代に集中していますが、その下に育っているα世代を観察し、その特性を把握する必要性を感じました。

 2030年の市場構造(生産労働人口の分布)を描いてみると、図表1のように4つの世代(団塊Jr世代・ミレニアル世代・Z世代・α世代)が共生する社会の姿が見えてきます。

 Z世代とα世代は家族の仲がよく、親子で一緒にショッピングを楽しみ、購入を決める際にLINEで「これどうかな?」「似合っている。いいね!」とやりとりするなど、互いの消費行動に影響しているので、「団塊JrとZ世代の親子」と「ミレニアル世代とα世代の親子」という2つの家族像を捉えて、親子間の影響について把握することが、未来洞察のポイントになると考えました。

(図表1)4世代が共生する2030年の社会像
(図表1)4世代が共生する2030年の社会像

未来ビジョンを比べて見えたZ世代とα世代の違い

 22年末に、Z世代の大学生とα世代の小学生が、2030年の理想の家と暮らしを描くことで、両世代の価値観と行動特性の違いを明らかにする「ミライ・スケッチ2030」プロジェクトを実施しました。

 このプロジェクトの目的は、Z世代の大学生が、α世代の小学生と一緒に未来の暮らし方を想像し、絵に描いてみる時間を共有することで、互いの価値観の違いに気付くこと。そして、Z世代が実感したα世代との考え方の違いや、これから起こり得る社会の変化について、マーケティングの実務者に報告し、研究開発に役立てていただくことです。今回調査に参加したのは、小々馬ゼミの大学生と、ぐんま国際アカデミー初等部の小学生たち。同校は、授業の7割を英語で実施するなど、英語教育プログラムで著名な小中高一貫教育学校です。

 プロジェクトは、3つのステップで進捗します。ここからは、セッションを重ねる度にZ世代が感じ取った、α世代との違いについて報告します。

(図表2)「ミライ・スケッチ2030」のプロセス
(図表2)「ミライ・スケッチ2030」のプロセス

 DAY1のブリーフィングでは、2030年代の未来を開発している企業のR&D部門の方々から、実務者が描いている未来ビジョンについて紹介いただきました。

 大学生が実感したことは、実務者が説明する未来ビジョンを、小学生がとても自然に受け取り、理解していたことです。大学生でも理解が簡単でないAI(人工知能)やロボティクスなど技術の話が多かったのですが、新しいテクノロジーを当たり前に受け入れられるリテラシーの高さに驚いたといいます。

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