新たな消費の担い手として注目を集めるZ世代。しかし、「Z世代」というワードが一人歩きし、その実態を捉えられていないマーケターは多いのではないだろうか。Z世代の研究を行っている、産業能率大学の小々馬敦教授による新連載では、一言では捉えられない新世代の特徴を、現役Z世代のコメントを交えながらひもといていく。

(写真/Shutterstock)
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Z世代情報が急増し、捉えづらくなってきた

 Z世代をテーマとする記事・報道・書籍の数は、直近の2年間で5倍以上に急増し、社会の流行語になっています。「Z世代に関する話題が増えているのはありがたいが、情報によって視点や切り口が異なるため実態を捉えづらく、実務にどのように活用できるのか悩ましい。本当のところどうなのかをZ世代から直接聞いてみたい」と理解のヒントを求めて、多様な業界、企業の方が大学の研究室を訪れてくれます。

 私の研究室は2013年の創立以来「マーケティングで世界をハッピーに!」をパーパス(存在意義・使命)に掲げて、企業内の若者研究ラボと産学連携研究を継続しています。毎年、高校生や大学生を対象とする全国調査を実施し、若い世代に見え始めている新しい価値観や消費行動の変容について整理したリポートを、ホームページで公開しています。

▼関連リンク(クリックで別サイトへ) 研究レポート | 産業能率大学 小々馬ゼミ:マーケティング、ブランディング研究実践

 また、公益社団法人日本マーケティング協会の支援をいただき「より良い社会の実現に資するマーケティングのあり様」を視座に、大学生と実務家が世代を超えて対話する場、「ミライ・マーケティング研究会」を開催しています。

 この連載では、これまでの産学連携研究から得たZ世代の価値観や消費行動に関する知見を、マーケターが捉えやすい観点から整理して報告します。また、私が日ごろ学生たちと対話する中で気づいた、Z世代の特性の背景にある環境要因も紹介していきます。この連載が皆様の実務のお役に立てばうれしいです。

なぜ「Z世代」は捉えづらいか

 Z世代の年齢定義には諸説ありますが、1990年半ば~2010年初頭に生まれた世代、現在10代半ばから25歳までの若者層を指すことが多く、その年齢幅は10年紀を超えています。高い解像度で対象を定義する現代マーケティングでは、このくくりでは漠としすぎていて実務に合理的とはいえません。Z世代に関する情報の捉えどころが難しい理由は、この年齢層の広さが一因となっています。

 私は「Z世代トレンド情報」というような記事を見つけると、学生に記事を見せて感想を教えてもらいます。Z世代の記事は上の世代向けに発信されているので、当のZ世代にリーチすることはほぼありませんし、当人たちは自分がZ世代であるという自覚も希薄なので、「こんな記事があるのだけど、どう感じる?」と記事の紹介から始めます。学生は、「これは高校生のことですね」「これはもう少し上の世代のことで私たちとは違います」と、それぞれの流行がどの年齢層のことなのか正確に教えてくれます。この判別はベテランマーケターの観点をもってしても捉えられないですし、Z世代に年齢の近い20代後半のマーケターに聞いても簡単ではないようです。

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