「Web3」はマーケティングに生かせるか? 第4回

ファンや顧客をいかに巻き込み、コミュニティーをつくり、共に成長していくのか。Web3時代に向けて、既存企業が今何をしていくべきかを特集で3回にわたってまとめてきた。4回目は、コミュニティーづくり、そしてオーナーシップの一部開放の鍵となるトークン活用について、プロ卓球チーム「琉球アスティーダ」を例に見ていく。

沖縄のプロ卓球チーム「琉球アスティーダ」は、Web3の積極的な活用を進める。その理由とは
沖縄のプロ卓球チーム「琉球アスティーダ」は、Web3の積極的な活用を進める。その理由とは

 Web3の主要テーマの1つであるトークン。最近では耳にすることも増えてきただろう。改めてトークンとは、資産性のあるデータであり、貨幣の代用として個人や企業が独自に発行できるもののこと。実は既に、多数の業界でトークンの活用が進んでいる。その中でも今回は、“Web3”への進出をうたい、積極的にトークンを活用しているプロスポーツチーム、「琉球アスティーダ」の事例を取り上げる。

 琉球アスティーダは、日本の卓球リーグ「Tリーグ」に所属する沖縄が本拠地のプロチームだ。リーグ参戦3シーズン目の「2020-21シーズン」で初優勝し、日本代表のエースである張本智和選手が所属することでも話題を集める。

 2021年3月には、運営会社である琉球アスティーダスポーツクラブ(沖縄県中城村)が、特定投資家向け株式市場TOKYO PRO Market(TPM)に上場。プロスポーツチームとしては日本初の上場で、スポーツ産業に新風を吹き込んでいる。

 続く21年7月には、ブロックチェーン技術を活用し、法人や個人におけるトークンを媒介にしたコミュニティープラットフォーム「FiNANCiE」で「アスティーダトークン」を発行。初回分で800万円以上のファンディングを行い、21年11月には第2弾、22年7月には第3弾のトークン販売を実施した。ファンディング額はトータルで3000万円を超えている。そのうち手数料を除いたぶん、約8割の資金がチームに入り、チーム強化などに活用されている。

琉球アスティーダは、2021年7月にFiNANCiEの仕組みを活用し、トークンを初めて発行
琉球アスティーダは、2021年7月にFiNANCiEの仕組みを活用し、トークンを初めて発行
トークンは、FiNANCiEのアプリから購入が可能。トークン価格の動きやトークンホルダー向けのメッセージ、イベントなどもここでまとめて見られる
トークンは、FiNANCiEのアプリから購入が可能。トークン価格の動きやトークンホルダー向けのメッセージ、イベントなどもここでまとめて見られる

 トークンは売って終わりではなく、FiNANCiE上での2次流通にも対応。その売買額の数%がチームに入る仕組みで、琉球アスティーダではトークンの販売収益以外に、年間で700万円程度がチームの収益となっているという。

 プロスポーツチームの場合、基本的に収入源は2つ。企業などによるスポンサー収入と、スタジアムでの試合時などの入場収入だ。トークンは第3の収入源といえる。トークン販売自体によるファンディングは一時的なものだが、そのトークンが売ったり買ったりされることで比較的安定的な収入になる。FiNANCiEを運営するフィナンシェ(東京・渋谷)COO(最高執行責任者)の田中隆一氏は、「既に企業スポンサーに匹敵する金額になりつつある事例もある」と言う。

 琉球アスティーダは何と、ユニホームの胸の部分、つまり最も目立つところに「アスティーダトークン」というトークン名を配置。「当初はリーグ関係者などに驚かれた」(琉球アスティーダスポーツクラブ代表の早川周作氏)という中でも敢行したのは、大きな可能性を感じたからだろう。

トークン発行の目的とメリット、その本命は?

 トークンの利用目的は、収益源の多角化だけではない。むしろ本命は、ファンコミュニティーの拡大と深化にある。

 「上場もトークンの発行も、より多くの方にオーナーシップを広げていくことが目的」と早川氏は語る。中でもトークンは、株式よりも手軽にそして手ごろな価格から入手できるため、より裾野が広がると期待しているのだ。

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