ECモールでの売り上げを最大化するために欠かせない、広告活用。スマート家電を中心に取り扱うECサイト「+Style(プラススタイル)」は、適切な広告運用によって売り上げを伸ばしてきた。プラススタイルは、2021年6月に大手ECモール「Amazon.co.jp」で開催された大型セール「Amazon Prime Day(プライムデー)」において、わずか2日間で1億5000万円を売り上げた実績を持つ。運営元のBBソフトサービス(東京・港)で、プラススタイル事業を率いる取締役執行役員の近藤正充氏が、広告運用のテクニックを解説する。
本連載第3回では、ECモールで勝つために最も大切と言っていい「セールの戦い方」について解説した。Amazonで年に2回実施されるビッグセールと、毎月開催されるセールを有効活用することで販売や収益を伸ばすことができるという内容だ。セール時に実践したいテクニックを説明しているので、ぜひセール前に読み返して試してみてほしい。
さて今回は、Amazonにおける広告運用について解説していく。「広告」と聞くと「もうかっている会社だけが実施できること」のように思われがちたが、そんなことはない。ROI(投下資本利益率)を考えたKPI(重要業績評価指標)設定や、KPIに基づきPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回す「運用」をすることで、出店後からすぐに使える有益なツールである。なお当社では、利益÷投資額×100(%)で算出されるROIに対し、計算しやすく結果をスピーディーに判断できるという観点から 、広告からの売り上げ ÷ 広告費 × 100(%)で算出されるROAS(広告費用対効果)をKPIとして設定している。
広告運用をうまく軌道に乗せるには時間がかかるものだが、最初の数カ月を辛抱すれば、その後は収益を生む原動力になってくれることは間違いない。なお、本稿もAmazonに自社で出品して販売するマーケットプレイス機能(セラー)についての解説であることを付け加えておく。
「スポンサー広告」「Amazon DSP」の使い分け
Amazonのマーケットプレイス機能で実施できる運用型広告は大きく分けて、「スポンサー広告」と「Amazon DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)」がある。他に個別カスタマイズできる広告などもあるが、本稿ではこの2つに絞って解説していく。
クリック数に応じて広告費が発生するクリック課金型のスポンサー広告は、Amazonで販売している商品やブランド認知度の獲得に活用する広告メニュー。広告の遷移先はAmazon内の商品ページや、「Amazonストアフロント(ページ)」と呼ばれるブランド専用ページとなる。
対するAmazon DSPは、Amazonのデータに基づき連携する「Googleのディスプレー広告」など外部にも広告出稿できるサービス。自社ECサイトで販売している商品など、Amazonで販売していない商品の認知拡大にも活用できる。広告の遷移先はAmazon内であれば商品詳細ページ、自社ECサイトなどであれば対象商品ページとなる。Amazon DSPは最低出稿費用が数十万円から数百万円(代理店によって違いあり)と高額のため、まずは数万円から始められるスポンサー広告から試していくことをお勧めする。
スポンサー広告には3種類ある。キーワード検索に連動して検索結果の商品一覧に掲載される「(1)スポンサープロダクト広告」、同じく検索キーワードに連動して検索結果の上段などに掲載される「(2)スポンサーブランド広告」、Amazonの購買データに基づき対象者を絞り込み、商品ページなどの広告枠に表示する「(3)スポンサーディスプレイ広告」だ。
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