※日経エンタテインメント! 2022年9月号の記事を再構成

「地元ノリを全国へ」をスローガンにリーダーのやまとを中心に2018年10月に結成した5人組YouTuber、コムドット。YouTuberでありながら、雑誌の表紙やCMに登場し、写真集を刊行するなど、YouTube界を大きく変えた存在だ。やまとに加え、ひゅうが、ゆうた、あむぎり、ゆうまの5人に、約4年の活動を振り返ってもらいつつ、コムドットの未来に迫った。

(写真/アライテツヤ ヘアメイク/大木利保 スタイリスト/吉田ケイスケ)
(写真/アライテツヤ ヘアメイク/大木利保 スタイリスト/吉田ケイスケ)

――この4年間で1番うれしかった出来事は?

やまと 2020年の8月に初めてYouTubeの急上昇動画に乗った時ですね。その時期は、平日は2本動画を投稿して、自分たちを追い込んでいて。最後の最後に、負けたら坊主になる罰ゲームをかけて、バスケをした企画が自分たちの中でも盛り上がったし、急上昇に乗った。死に物狂いでやってたので、やっと報われた感がありました。次の年の初めての急上昇1位よりもうれしかった。

1日2本の動画をノルマに

1日2本投稿というかなりのハイペースで動画を投稿していたのは、20年中にチャンネル登録者数50万人を宣言していたものの、夏の時点で25万人程度に止まっており、目標に達する危機感があったためだ。19年は、“会えるYouTuber”として月1ペースでイベントを開催し、登録者数が10万人に達したが、20年初めにコロナ禍が襲いかかり、新たな手法を探す必要に迫られていた。

――状況を打開したいという気持ちは大きかった?

やまと 大きかったですね。20年内に登録者数50万人の目標も掲げていたので焦りもあって、毎日2本上げることで注目を集めて、数字を上げていこうと思ってました。

ひゅうが あれほどスケジュールに重圧を感じた時期はないですね。

やまと 最初は、無名な自分たちの動画は再生回数が稼げないっていう現実にぶつかって。でも、再生回数を稼ぎやすい心霊動画や大食い動画をやって自分たちが楽しいのかっていったら微妙で。ただ20年ぐらいから「地元で遊んでいる動画」というスタンスがやっと定まっていった。

ひゅうが やりたいことに視聴者がついてきてくれるようになったのはあります。

やまと 19年までは実験の日々でした。はやってる曲を使って動画を撮ると検索エンジンによって再生回数が伸びるとか、そういう試みを毎日していくうちにコツをつかみ、ファンの人たちがついてきてくれた段階で、一気にやりたいことだけをやる方向にスイッチしました。そこのシフトチェンジはすごくうまくいったと思います。

ひゅうが 毎日投稿してたから実験回数が多かったのも大きかったよね。

信念が爆発的人気につながる

さらに振り返ると、初期からコムドットを支えてきた名物企画に「偏見のあるあるネタ」を即興で言っていく企画がある。動画を初投稿した翌月には、第1回を開催しており、発案者はゆうただった。「この企画をやりたかったからYouTubeチャンネルを立ち上げた」と話すほど自信の企画だったという。

――ゆうたさんが発案した企画ですが、ここまで長く続いていることについてどう捉えていますか?

ゆうた 最初は「うわ、言わなきゃよかった」って後悔しました(笑)。常に面白いことを考えなければならないので。

ひゅうが 撮影前日のプレッシャーきついもんな。

あむぎり やる度にハードルが上がっていった(笑)。

ゆうた 結果的に名物企画になって良かったですけど。

ひゅうが ゆうたとゆうまが特に面白いことを求められてたしね。笑いのスタンス的にあっちゃん(あむぎり)は何言ってるか分かんなくても面白いし、やまとは滑り笑いだし。

やまと 誰が滑り笑いだ。

全員 (笑)。

ひゅうが 視聴者から、ゆうた君とゆうま君にはギリギリのラインを狙ってほしいっていうコメントがかなり来てた。

――コメント欄に寄せられる意見や感想は、どれぐらい動画に反映されるんですか?

ひゅうが オープニングトークはほぼコメント欄の話題ですね。コメント欄で誰かが何か言われてることがネタになったり。5人でやってる分、1人がいじられてることを面白く昇華できる。例えば、ゆうまが結構言われててヤバイ状態なのに、めっちゃ面白い状態に見せられたりするから。

ゆうた そのいじりに対し、ゆうまはいつも「は?」みたいな顔をしてる(笑)。

ゆうま あははは。

ひゅうが 1人のYouTuberだとコメント欄でいじられたら、謝罪するか言い返して変な感じになるかの二択だと思うんですけど、5人だと他の4人は無関係な顔ができるんですよね。

ゆうた そこはグループと分けて考えられるよね。

ひゅうが ただ、愛情を持った指摘もあるので、そこは「もうちょっとちゃんとしたほうがいいんじゃない?」って受け止めますね。

やまと 昔より簡単に会えないので、よりコメント欄には反応するようになりました。視聴者との距離感は変えたくないので、積極的に面白いコメントを拾うとか、企画のリクエストがあったらやってみたり。テレビにはないYouTubeの醍醐味はそこだと思うんです。コムドットは忠実に、かつ自然に視聴者の人と向き合ってるところがクリエーターとして優秀だと思ってます。

YouTubeが好きな人じゃなくてコムドットを好きな人を作りたかった

視聴者とのコミュニケーションを大事にすることで、まさに「地元ノリを全国へ」を具現化しているコムドット。具体的な目標やビジョンを動画で宣言することによって、ファンの「応援したい」という気持ちを刺激しているのも特徴的だ。

一方で、自らの中にある確固たる信念はゆらぐことがない。19年の後半には、「オープニングトークが長い」と視聴者から指摘されたのに対し、「そこに自分たちの面白さが詰まってるし、長尺の動画を見てもらえるように頑張る」と宣言している。その後、21年に入ってから60分近い長尺動画を展開するようになり、コムドット人気が爆発する大きな要因の1つとなった。

――長尺動画が人気になりましたが、どう考えていますか?

やまと 狙い通りですね。視聴者の可処分時間を独占したいって考えたんです。となると、単純に長尺のほうが長い時間が費やされる。YouTubeが好きな人じゃなくてコムドットを好きな人を作りたかったので、自分たちのスタイルを確立するためにオープニングトークを長くして、企画ではなく人間性で付いてきてくれる人を増やそうと思いました。加えて、それを動画で言うところがコムドットですよね。別に口に出さずに長尺にしても良いと思うんですが、宣言することで視聴者が応援しやすくなると思うんです。

ひゅうが 応援してる相手がうまくいってると、「ほらね」ってアンチの人に言えちゃうっていうのもあるよね。

やまと 登録者数の目標数値を掲げるのもそう。何かを追ってる人のほうが応援したくなるっていうのはあるから。

――コムドットは、目標だけでなく、例えば誤解をして過剰な書き込みをする視聴者に対してはっきりと物申したりもしています。

ひゅうが 秩序は自分たちで保たないといけないので。グループだから強く言えるっていうのもありますね。例えば、やまとが強めに言ってもあっちゃんが優しかったら、動画としては楽しげな雰囲気になるけど、やまとの言いたいことも伝わる人には伝わる。

やまと 僕たちは嫌なことがあったら溜めないタイプで、思ったことをはっきり言う動画も多い。いわば、すぐに「それやめて」って言えるタイプの“いい彼氏”だと思うんです。そのせいで、大きなけんかになりにくい。

ひゅうが 小競り合いは多い(笑)。

やまと そう。でも大きな爆発はなくて、そのほうが穏便だと思ってます。視聴者の人に嘘をつかずに思っていることを言うスタンスを貫けてるのは、動画を撮ってから出すまでの期間が他より短いっていうのも大きいと思います。

(後編に続く)

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