D23に見るディズニー「100周年」戦略 第1回

米ウォルト・ディズニーは2023年10月に創業100周年を迎える。節目まで約1年と迫る22年9月9~11日、米アナハイムで大規模ファンイベント「D23 Expo 2022」を開催した。本家ディズニー映画はもちろんピクサー、マーベル、ルーカスフィルムと傘下スタジオの総力を挙げた100周年プランを明らかにした。

米アナハイムでファンイベント「D23 Expo 2022」が2022年9月9日~11日に開催された
米アナハイムでファンイベント「D23 Expo 2022」が2022年9月9日~11日に開催された

 手持ちのお金は40ドルだけ。スーツケースに画材を詰め込んで米ロサンゼルスの駅に降り立った故ウォルト・ディズニー氏(以下、ウォルト氏)が、ハリウッドでアニメスタジオを設立したのが1923年。それから間もなく100周年を迎える。

 ロサンゼルスの南東に位置するアナハイムには1955年に開園した“元祖”ディズニーランドがある。隣接する展示会場でディズニーファンが集う大規模イベント「D23 Expo 2022」が2022年9月9日~11日に開催された。

アナハイムのディズニーランド・リゾートに立つウォルト・ディズニー氏の像
アナハイムのディズニーランド・リゾートに立つウォルト・ディズニー氏の像

 09年から始まり2年に1回のペースで開催されてきたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で今回は3年ぶりとなった。経営陣だけでなく同社作品を支える俳優やクリエーターが登壇し、映画、テレビ作品、テーマパークなどの最新情報を発表する。展示会場では各作品の内容や衣装、ディズニーの歴史を物語る博物館のようなブースがある。グッズ販売のコーナーにもファンが殺到していた。

単なる文化遺産にはならない

 「この100年間、ディズニーはエンターテインメントを定義してきたが、文化的遺産になるつもりはない。臆病になっている暇はなく、大胆な取り組みを続ける」。イベント冒頭でステージに立ったディズニーのボブ・チャペックCEO(最高経営責任者)はそう話した。ディズニーは06年にピクサー、09年はマーベル・エンターテインメント、12年はルーカスフィルム、19年は21世紀フォックス(現在は20世紀スタジオ)と外部スタジオの野心的な買収を繰り返してきた。

さまざまなキャラクターに囲まれて話す米ウォルト・ディズニーのボブ・チャペックCEO(中央)
さまざまなキャラクターに囲まれて話す米ウォルト・ディズニーのボブ・チャペックCEO(中央)

 新しい血を取り入れ、進化を目指し、ファン層を拡大する。その成果の一例として、チャペックCEOは、アナハイムのディズニーランド・リゾートで21年6月にオープンした「アベンジャーズ・キャンパス」について説明した。アイアンマンやキャプテン・アメリカ、ソー、ブラックパンサーといったマーベル作品のヒーローがショーを見せ、その後は通路に降り、写真撮影に応じてくれる。ディズニーランドといえば、作品世界に迷い込んだかのような臨場感が特徴の1つ。その醍醐味をうまくマーベル世界と組み合わせた。複数のマーベル作品を融合させ、さまざまなヒーローが共存する「マルチバース」世界で戦う同エリア内の新アトラクション構想も発表した。

米アナハイムのディズニーランド・リゾートにあるエリア「アベンジャーズ・キャンパス」
米アナハイムのディズニーランド・リゾートにあるエリア「アベンジャーズ・キャンパス」
アベンジャーズ・キャンパスで予定する新アトラクションのイメージ図 (c) Disney
アベンジャーズ・キャンパスで予定する新アトラクションのイメージ図 (c) Disney

 やみくもに外部スタジオを取り込めば、これまでのディズニー作品との違和感が生じかねない。組織の肥大化による停滞といった弊害が発生する可能性もある。ディズニー国際コンテンツ部門会長のレベッカ・キャンベル氏は、相次ぐスタジオ買収の背景に「映画を見て、グッズを買ってもらい、そしてパークで実際に体験してもらう。我々はその反応から学びを得て新しい映画をつくる。ウォルトが作り上げてきたモデルを、他のIP(知的財産)でも実践していく」という狙いがあったと話す。

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