東京ゲームショウ2022(TGS2022)に出展した世界のブロックチェーンゲームを体験できる「YGG JAPAN」のブース。大手ゲームメーカーにも引けを取らない最大規模のブースには、魅力的なステージセッションも目白押し。多彩な来場者を集め、業界を超えた注目を集めた。

ブロックチェーン関連で最大規模のブースで登場した「YGG JAPAN」。ゲーム業界以外の関係者も数多く詰めかけた
ブロックチェーン関連で最大規模のブースで登場した「YGG JAPAN」。ゲーム業界以外の関係者も数多く詰めかけた

 ブロックチェーンゲーム関連出展者として最大規模のブースを構えたブロックチェーンゲーム「YGG Japan」。「『ギルド』らしく『人』の力でTGSに挑む」をテーマにしたブースには、ブロックチェーンゲームパークとステージが用意し、ステージセッションには、ゲーム業界やクリエイター、ブロックチェーン企業の有識者が登壇。ブロックチェーンゲームの最新情報や可能性、今後の課題などを語った。さらに、ゲーム特化ブロックチェーンのオアシス(Oasys)と共催でブロックチェーンゲームのピッチコンテストも開催した。

「YGG JAPAN」ブースではゲーム業界、クリエイター、ブロックチェーン企業の有識者による多彩なステージセッションを開催した
「YGG JAPAN」ブースではゲーム業界、クリエイター、ブロックチェーン企業の有識者による多彩なステージセッションを開催した

 ゲームエリアでは、MARBLEX、Realital LLC、Kingdomverse、animoca BRANDS、double jump.tokyoといった企業が共同出展。ブロックチェーンゲームとして『KOF ARENA』『ブレイブ フロンティア ヒーローズ』『RetaWars』『Kingdomverse』『PhantomGalaxie』『RevvRacing』『Gametaverse』などを紹介した。

TGS2022の初日、9月15日の夜にはナイトイベントも行われた。ゲーム特化ブロックチェーンのオアシス(Oasys)と共催でブロックチェーンゲームのピッチコンテストを開催。入賞したゲーム開発者は、特典として共催企業からの最大1億円の出資などが受けられる
TGS2022の初日、9月15日の夜にはナイトイベントも行われた。ゲーム特化ブロックチェーンのオアシス(Oasys)と共催でブロックチェーンゲームのピッチコンテストを開催。入賞したゲーム開発者は、特典として共催企業からの最大1億円の出資などが受けられる
ブロックチェーンゲームパークでは試遊できるゲームのほか、開発中の新タイトルも多数紹介されていた
ブロックチェーンゲームパークでは試遊できるゲームのほか、開発中の新タイトルも多数紹介されていた

ゲームのキャラクターやアイテムを資産化

 YGG Japanは世界最大のDAO(自律分散型組織)型ゲーミングギルドであるYield Guild Games(YGG)の日本法人だ。国内運営はブロックチェーンゲームのDAO(自律分散型組織)型コミュニティーを提供するForN(東京・港)が担当している。

 同社の宮下翔氏は、「現在、ブロックチェーンゲームではファイナンスの部分がより注目されているが、(YGGでは)エンターテイメントをより進化させ、『Play and Earn(遊んで稼ぐ)』を提供することを目指す」と語る。

クエストをクリアしてスタンプを集めると必ずNFTがもらえるガチャは大盛況
クエストをクリアしてスタンプを集めると必ずNFTがもらえるガチャは大盛況

 ところで、ブロックチェーンゲームと従来のゲームは、いったいどこが違うのか? ゲームをプレーするだけでお金を稼ぐことができるというイメージばかり先行するが、メリットはそれだけではない。例えば、ゲーム内で作成したり、獲得したキャラクターやアイテムをNFTマーケットプレイスで売却して収益を得たり、ゲーム内自分だけのアイテムやキャラクターを作成したりできるのもブロックチェーンゲームの大きな特徴である。

 さらに、「不正行為が発生しにくいという利点もある」とForNの研究開発部横田昇吾氏。「簡単に説明すると、ブロックチェーンは取引履歴を暗号技術によって1本の鎖のようにつないで記録する技術。複数のシステムや機関がそれぞれ情報を保有しながら、情報を同期する。いわば取引履歴などをユーザー同士で管理するシステムなので、データの改ざんが不可能に近い」(横田氏)。

 また、これまでのゲームは、データをソフトの運営会社がコントロールしていたので、ゲームが終了すれば、データもなくなり、膨大な課金をしていたアイテムも消失してしまうが、ブロックチェーンゲームでは、ゲームの存在がなくなっても、キャラクターやアイテムを資産として残し、他のゲームで使い回せることもあり得ると話す。「したがってゲームの開発する側にとっても、可能性が広がる」(横田氏)。

 これはゲームの遊び方をも変えそうだ。例えばRPGなどでよく「取り返しのつかない案件」に泣くケースがある。個人的な経験だが、後の錬金や合成に必要な特殊アイテムが特定のイベント発生後には手に入らなくなって、やる気をそがれてしまうことがあった。また、ソーシャルゲームなどでは、新規ユーザーは過去に開催された期間限定のコラボアイテムの入手は不可能だ。ブロックチェーンゲームでは、こうしたデメリットも資産としてやりとりできれば解消できそうだ。

 「ブロックチェーンゲームは、一般ゲームのライトユーザーや現在、プレーしていない休眠ユーザーからゲームに興味のなかった層まで取り込める魅力があふれている。この規模でTGS2022に出展できたことはとても意味がある。3年後に『あれがブロックチェーンゲームの元年だった』と振り返ることができるよう業界を盛り上げていきたい。(YGG Japanとして、活気あるギルドが生まれるための)スカラーシップ体制の強化や、ギルド運営ツール、ゲームに関する各種インセンティブプログラムなどを通じて、環境整備に尽力したい」と宮下翔氏は意気込みを語った。

 環境が整いつつあるブロックチェーンゲームかいわい。メガヒットとなるタイトルが生まれれば、一気に加速するのは想像に難くない。今後の動きに注目したい。

(文/永浜敬子、写真/永浜敬子、木村 輝)

▼関連リンク 日経クロストレンド「東京ゲームショウ2022特設サイト」 東京ゲームショウ2022公式サイト(クリックで公式サイトを表示します)
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