第8ホールにブースを構える周辺機器メーカーのスティールシリーズジャパン。ゲーミング機器の老舗ブランドはTGS2022にヘッドセットとキーボードの新シリーズを中心にさまざまな製品を出展。日本の周辺機器市場の動向を含め、カントリーマネジャーの石井靖人氏に話を聞いた。

周辺機器市場はコロナ禍で売り上げが急増 現在も堅調に右肩上がりを続ける

――スティールシリーズとしては日本市場をどのように考えているのでしょうか?

石井靖人氏(以下、石井氏) 日本のPCやゲーム機の周辺機器市場は22年末時点で350億円からうまくいけば400億円に達しそうな見込みです。

 そんなに大きくない数字に思えるかもしれませんが、世界各国と比較すれば、かなり大きな規模であると言えます。参入メーカーが少ないこともあり、当社としても日本市場にはかなり注力していて、弊社のシェアも年々確実に拡大しています。

 おととし、昨年がコロナ禍で想定外の売り上げを記録していただけに、そこと比較するとこの2~3カ月は低い数字になってしまっています。ただ、それにしても確実に右肩上がりの状況は続いていて、堅調と言えるでしょう。

 今回のTGSではブース内のステージで何回かイベントを実施していますが、ビジネスデイであるにも関わらず、こちらの想定を超えてあふれるほどのお客さまに来ていただけました。eスポーツを中心にゲーマーが増えていることが数字としてだけでなく、実感として理解できたのは弊社としてもいい経験になりました。

 ただ、プレイヤー数の伸びを考えると、周辺機器市場はそれでもまだ一歩踏みとどまっている感があり、もっと伸びる余地はあると思っています。おそらくは何かのきっかっけでこうした“ユーザー予備軍”とも言える層に火が付くのではないかと思っていて、今年から来年にかけて、そういった大きな動きがあるのではないかと期待しています。

――スティールシリーズはゲーミングギアのブランドとしてはかなり老舗とも言っていいブランドで、日本市場への参入も早かったですよね。

石井氏 スティールシリーズはデンマークからはじまったブランドですが、日本市場に進出して約10年になります。日本ではeスポーツという言葉がほとんど聞かれることのなかった頃から展開していて、DeToNatorさんeスポーツチームへのスポンサードもいち早く行ってきた実績があります。

 黎明(れいめい)期の頃は弊社製品を使うようなゲームのイベントというと、せいぜい数百人が集まるといった規模のものが多かった印象です。

 大きく変わったのはもうホントにここ数年で、たとえばさいたまスーパーアリーナで開催された『VALORANT(ヴァロラント)』のeスポーツイベントでは約2万6000人という観客動員数を記録するなど、万単位のお客さまが集まるゲームイベントが珍しくなくなりつつあります。

 先ほど今年の市場規模が400億円に達しそうだと触れましたが、つい5~6年前までは100数十億円という規模でしかありませんでした。僕らとしてもYouTuberやストリーマー、eスポーツ選手と連携を取りながらゲーマー向けに情報発信をはじめたがのこの2~3年。そうした取り組みも奏功して世間の動きに連動するようにシェアが急進している状況です。

第8ホールにあるe-Sportsコーナーのすぐわきに位置するスティールシリーズジャパンのブース。あまり大きなブースではないが、奥にゲーミングPCを並べたひな壇状のステージがしつらえられ、時間帯によってはステージイベントが開催されていた。
第8ホールにあるe-Sportsコーナーのすぐわきに位置するスティールシリーズジャパンのブース。あまり大きなブースではないが、奥にゲーミングPCを並べたひな壇状のステージがしつらえられ、時間帯によってはステージイベントが開催されていた。
日本市場を統括するカントリーマネジャーの石井靖人氏
日本市場を統括するカントリーマネジャーの石井靖人氏

ヘッドセットとキーボードのラインを拡充する新製品

――今回のブースに出展されている製品のなかでの注目製品を教えてください。

石井氏 9月15日に発表されたばかりの新製品、ヘッドセット3機種「Arctis Nova 1/3/7」と、キーボード2機種「Apex 9 TKL」と「Apex 9 Mini」ですね。

 今回発表した「Arctis Nova 1/3/7」は接続方法とともに価格が違います。それに先立ち7月には「Arctis Nova Pro」を発表していますが、それぞれに接続方法と価格の違う「Arctis Nova 1/3/7」が加わることで幅広い価格帯をカバーし、誰もが手に取れるような体制が整った形です。

 ヘッドセットのユーザーが増えるにしたがって、せっかくの高性能なヘッドセットをゲームだけでなく、いろんなことに使いたいという声をいただくようになりました。「Arctis Nova」シリーズは高級オーディオ製品に近いデザインラインで、今まで以上に高音質を追求し、幅広い用途に対応できるものになっています。

――スティールシリーズのキーボードはアクチュエーションポイントを自由に設定できる高機能さがセールスポイントでしたが、今回の「Apex 9 TKL/Mini」は1.0mmか1.5mmの2段階から選択する形なんですね。

石井氏 そうですね。アクチュエーションポイントの深さは言ってみれば感度みたいなもので、感覚的な「反応しやすさ」の違いを生みます。「Apex 9 TKL/Mini」はその設定幅を2段階と減らしているかわりに、0.2msとレスポンスタイムを可能な限り速めています。

――従来とは持たせる機能の方向性が違っているのは、ユーザーの要望を受けてのことですか?

石井氏 キーボードもヘッドセットも常にユーザーの声を集めて製品作りに生かしています。たとえばヘッドセットではアクティブノイズキャンセラレーションがついたり、ヘッドバンドの調整幅が広がったりするといった機能改善はそういった要望を受けてのもの。

 キーボードに関しては赤軸や青軸といったスイッチの違いで幅広い好みに対応するところからはじまって、どんどん高機能化が進み、アクチュエーションポイントの細かな変更に対応するに至り、最新の「Apex Pro」に関しては0.2mmから3.8mmまでの幅で調整が可能です。

 キーボードをよりシビアに使うのは『VALORANT』や『Apex Legends』といったFPSです。このジャンルを好むプレーヤーのなかでは調整幅の細かさより「とにかく反応速度の速さを」という声が根強く、それに応えたのが「Apex 9 TKL/Mini」ですね。

10月7日に3機種が発売となる「Arctis Nova」。「Arctis Nova 1」(参考価格:税込み9540円)は3.5mmのオーディオジャック、「Arctis Nova 3」(参考価格:税込み13720円)はUSB-C、「Arctis Nova 7」(参考価格:税込み27250円)は2.4GHzロスレスワイヤレス/Bluetoothのデュアルワイヤレス接続と、接続方法や価格が違う
10月7日に3機種が発売となる「Arctis Nova」。「Arctis Nova 1」(参考価格:税込み9540円)は3.5mmのオーディオジャック、「Arctis Nova 3」(参考価格:税込み13720円)はUSB-C、「Arctis Nova 7」(参考価格:税込み27250円)は2.4GHzロスレスワイヤレス/Bluetoothのデュアルワイヤレス接続と、接続方法や価格が違う
「Arctis Nova」のボリュームダイヤルやマイクミュートのボタンはイヤーパッド脇にまとめられていて、操作性は良好。また、マイクブームは収納式だ。収納した状態でも音声を拾うことができる。
「Arctis Nova」のボリュームダイヤルやマイクミュートのボタンはイヤーパッド脇にまとめられていて、操作性は良好。また、マイクブームは収納式だ。収納した状態でも音声を拾うことができる。
キーボードの新製品は「Apex 9 TKL」と「Apex 9 Mini」の2機種。アクチュエーションポイントは1.0mmか1.5mmの2段階のみしか設定できないが、0.2msというレスポンスタイムの短さに強みがある
キーボードの新製品は「Apex 9 TKL」と「Apex 9 Mini」の2機種。アクチュエーションポイントは1.0mmか1.5mmの2段階のみしか設定できないが、0.2msというレスポンスタイムの短さに強みがある
「Apex Pro」の右上に装備されたOLEDディスプレイ。キーボードが押し込まれた深さがバーの長さで、また、アクチュエーションポイントが▲で表示される。アクチュエーションポイントはその右にあるコントローラーで設定することが可能だ
「Apex Pro」の右上に装備されたOLEDディスプレイ。キーボードが押し込まれた深さがバーの長さで、また、アクチュエーションポイントが▲で表示される。アクチュエーションポイントはその右にあるコントローラーで設定することが可能だ
極限までメッシュ状に肉抜きされた軽量ボディーを持つ「AEROX」シリーズなど、スティールシリーズはゲーミングマウスでも定評のあるブランド。同社ブースではその全製品を手に取ることができた
極限までメッシュ状に肉抜きされた軽量ボディーを持つ「AEROX」シリーズなど、スティールシリーズはゲーミングマウスでも定評のあるブランド。同社ブースではその全製品を手に取ることができた

ダイレクトなユーザーの反応に手応えあり

――TGS2022に出展してみて、手応えはどうですか?

石井氏 こちらの想像を超える多くの来場者にお越しいただけて、驚いています。ビジネスデイからすでに皆さん、3年ぶりのゲームショウを楽しんでいらっしゃる感じが伝わってきます。

 8年前に初めてブースを出展した頃と比べると、ユーザーの皆さまの興味の度合いがより広く深くなっていることにも驚いています。

 お客さまの反応やエンゲージメントを肌で感じ、やっぱりこういうユーザーとのコンタクトが取れる場はメーカーにとってとても大事だと改めて感じています。今から一般公開日が楽しみですね。

ブースを訪れる来場者の数が想像以上だったと出展の手応えを語る石井氏。
ブースを訪れる来場者の数が想像以上だったと出展の手応えを語る石井氏。
17日正午からスティールシリーズジャパンのブースで開催された「REJECT STAGE」。REJECTのメンバーである、takej選手、Reita選手、Anthem選手、MOTHER3選手が出演し、ブースからあふれるほどの観客を集めていた
17日正午からスティールシリーズジャパンのブースで開催された「REJECT STAGE」。REJECTのメンバーである、takej選手、Reita選手、Anthem選手、MOTHER3選手が出演し、ブースからあふれるほどの観客を集めていた

(文・写真/稲垣宗彦=スタジオベントスタッフ、写真/木村輝)

▼関連リンク 日経クロストレンド「東京ゲームショウ2022特設サイト」 東京ゲームショウ2022公式サイト(クリックで公式サイトを表示します)
この記事をいいね!する