ゲームメーカーの出展コーナーと同様に、ゲームスクールコーナーも3年ぶりにいつもの活気を取り戻した。未来のゲーム業界を担う、学生たちが作り上げた秀作の数々ををご覧いただこう。

 3年ぶりのリアル開催が実現したTGS2022会場には、コロナ禍以前からおなじみのゲームスクールコーナーも見事に復活。学生たちが思い思いに開発した、個性あふれるゲームが多数出展されていた。各学校の学生も先生方も、自分たちの作品が多くの来場者に見てもらえる機会が得られ、喜びもひとしおだったことだろう。

 以下、筆者が独断と偏見で選んだ、ゲームスクールコーナーで特に目を引いた4校のブースと学生作品5タイトルをまとめてご紹介する。

今年は1ホールに配置されたゲームスクールコーナー
今年は1ホールに配置されたゲームスクールコーナー

伊織もえさんのプロデュース作品

 バンタンゲームアカデミーブースに出展された『Hiding Zombie』は、コスプレイヤーの伊織もえさんがプロデュースした作品。スタッフによると、昨年に伊織さんが同校ブースを訪れた際に意気投合し、コラボ企画が実現したそうだ。商業用の作品でもなく、伊織さんも同校の出身ではないにもかかわらず、タレントとのコラボが実現したケースは極めて珍しい。

 本作は、主人公のゾンビの少年を操作して、人間に見付からないように身を隠しながらゴールを目指すシンプルなルールと、可愛らしいビジュアルが特長のアクションゲームだ。

伊織もえさんがコンセプトとキャラクターデザインを手掛けた『Hiding Zombie』
伊織もえさんがコンセプトとキャラクターデザインを手掛けた『Hiding Zombie』
伊織さんのサインとイラストも展示されていた
伊織さんのサインとイラストも展示されていた

伝統工芸をテーマにした個性派ゲーム

 愛知工業大学ブースでは、伝統工芸をテーマにした『扇義 陰陽道中』『必殺障子人  ~大江戸百鬼夜行~』の2タイトルが、海外の来場者からも多くの注目を集めていた。

 『扇義 陰陽道中』は、扇子を操作して妖怪を退治するアクションゲーム。扇の動きをレーザーで検出し、その軌跡をポリッド(透過型)スクリーン上に描き出す、独創的なアイデアを取り入れている。たとえ妖怪をうまく倒せなくても、ただ扇子で図形などを描くだけでも楽しかった。

 『必殺障子人  ~大江戸百鬼夜行~』は、畳の上に座った状態で小型の障子を操作して遊ぶゲーム。プレイヤーは障子を閉めた状態で待機し、障子に映し出された影絵が人間だったら開き、妖怪だったら閉じれば得点となる。正体は人間なのか、それとも妖怪なのか、影絵にすると瞬時に判断するのは難しい、絶妙のポーズを取るキャラクター(※『いらすとや』の素材などを使用)をチョイスした学生のセンスが素晴らしかった。

センスを操作デバイスにするユニークなアイデアが光る『扇義 陰陽道中』
センスを操作デバイスにするユニークなアイデアが光る『扇義 陰陽道中』
影絵の正体を推理するのが楽しい『必殺障子人  ~大江戸百鬼夜行~』
影絵の正体を推理するのが楽しい『必殺障子人  ~大江戸百鬼夜行~』

立体音響を利用したゲームも登場

 コロナ禍以前から、毎年のように独創的な作品を出展し、見る物を驚かせる神奈川工科大学ブース。今回出展した4タイトルのうち、音(立体音響)に着目した『パリピチェイス』という作品が面白かった。

 本作は、パリピの会場となった河原を逃げ回る透明人間化した博士を、仲間のプレイヤーとともに探し出し、制限時間内に捕まえれば勝利となるオンライン協力プレイゲーム。博士の居場所を、ヘッドホンから聞こえる立体音響の音声を聞きながら突き止めたり、マッチングした仲間とインカムで情報を交換しながら追い詰めたりするのがとても楽しかった。

立体音響と、協力プレイならではの面白さがシンプルに伝わってくる『パリピチェイス』
立体音響と、協力プレイならではの面白さがシンプルに伝わってくる『パリピチェイス』

日本ゲーム大賞を受賞した秀作も

 毎年のように日本ゲーム大賞のアマチュア部門を受賞する作品を輩出する、日本工学院・東京工科大学ブース。今年も日本工学院の学生チームが開発した『ドラッグノッグファイト』という作品が見事に受賞した。

 本作は、鎖でつながった2個の重りを操作し、制限時間内にどれだけ多くのブロックを壊し、高得点を稼げるのかを競うアクションゲーム。重りを円を描くようにグルグル振り回す独特の操作感と、ブロックを破壊するたびにコントローラーが絶妙の強さとタイミングで振動して、爽快感がぐっと増すアイデアが秀逸だった。

日本ゲーム大賞アマチュア部門を受賞した『ドラッグノックファイト』
日本ゲーム大賞アマチュア部門を受賞した『ドラッグノックファイト』

(文・写真/鴫原 盛之)

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