タカラトミーは2022年9月15日、ロングセラーゲーム「黒ひげ危機一発」をメタバース上で再現したゲームをリリースした。日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターと手を組み、新たな遊び方を提案する。なぜタカラトミーはリアルな玩具の世界から飛び出したのか。その狙いを聞いた。

タカラトミーがオープンした「メタバース 黒ひげ危機一発」
タカラトミーがオープンした「メタバース 黒ひげ危機一発」のゲーム画面

 「黒ひげ危機一発」は、1人ずつ順番にタルの穴に剣を刺し、タルの中の「黒ひげ人形」を飛び出させた人が負け、というゲーム。いつ飛び出すか分からないハラハラドキドキ感や、単純明快なルールが売りだ。タカラトミーが1975年7月1日に発売し、2022年8月までに87種類を発売。世界47の国と地域で累計出荷数1700万個を超えるロングセラー商品となった。

タカラトミーのロングセラー「黒ひげ危機一発」
タカラトミーのロングセラー商品「黒ひげ危機一発」

 タカラトミーは2022年9月15日、日本最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターと手を組み、メタバース上に「メタバース 黒ひげ危機一発」をオープンした。タカラトミーがメタバース事業に挑戦するのは初めてのこと。リアルな玩具とデジタル空間づくりのノウハウを融合させ、仮想空間で遊べる玩具を開発した。

「メタバース 黒ひげ危機一発」を発表する、タカラトミーNEXTビジネス本部の山﨑正彦氏
「メタバース 黒ひげ危機一発」を発表する、タカラトミー Moonshot事業部長の山﨑正彦氏

 対応するのは、PCやスマートフォン、「Meta Quest 2」などのVRデバイス。アイテムの購入といった一部課金コンテンツがあるものの、基本は無料でプレイできる。アプリ版の対象年齢は13歳以上だ。

 遊べるゲームは3種類。複数人で遊べる黒ひげ危機一発のよさを引き継ぎ、いずれも最大12人で遊べるマルチゲームだ。1つ目が、ベーシックな「黒ひげ危機一発」。2つ目が「指令! 黒ひげ危機一発」。プレイヤー同士でコミュニケーションを取りながら、海賊船に隠された剣を制限時間内に探し、タルに剣を指すオリジナルゲーム。3つ目が「脱出! 黒ひげ危機一発」。巨大なタルに剣を刺し、タルの内側に足場を作る。その後、タルの内側に入り、足場を利用して頂上までたどり着き、黒ひげ人形を脱出させるオリジナルゲームとなっている。

 企画した、タカラトミー Moonshot事業部長の山﨑正彦氏は、「黒ひげのタルの中に入り込むこともできる。メタバースならではの魅力が詰まった、まったく新しい黒ひげ危機一発」と語る。

「脱出! 黒ひげ危機一発」では、タルの内側に入って遊べる
「脱出! 黒ひげ危機一発」では、タルの内側に入って遊べる

スマートフォンで試してみると、リアルな玩具にはない面白さ

 実際に、ベーシックな「黒ひげ危機一発」をスマートフォンで試した。まずはクラスターのアプリをダウンロードし、「メタバース 黒ひげ危機一発」を選択。アバターを選ぶとゲームがスタートする。操作は横画面。画面の左下にあるバーチャルパッドでアバターを動かす。フィールド上に落ちている剣を拾い、タルの穴に剣先を合わせると、「剣をさす」という表示が出る。この表示をタップすると、剣が刺さるという流れだ。

 操作に慣れるまでには少し時間がかかりそうだが、基本的なゲーム感はリアルな玩具とほぼ変わらない。ネットを通して、いつでも誰とでも黒ひげ危機一発が遊べるのは、リアルな玩具にない面白さといえる。

アプリ版では、横画面で遊ぶ。左下のバーチャルパッドでアバターを動かす
アプリ版では、横画面で遊ぶ。左下のバーチャルパッドでアバターを動かす

Z世代以上のファン拡大狙う

 タカラトミーの持つさまざまなブランドの中から黒ひげ危機一発を選んだのは、「タカラトミーファンはファミリーが多く、メタバースとは遠い存在。なるべくシンプルな遊びにしたいと考え、かつ大人数でできる遊びを考えた結果だった」(山﨑氏)

 タカラトミーがメタバース事業に参入したのはなぜか。これまで玩具といえば、主な対象は小学生以下で、家族が子供にプレゼントするのが一般的だった。しかし、少子化の影響で市場の縮小が懸念され、タカラトミーは危機感を持っていた。山﨑氏は「『おもちゃからアソビに』という会社の方針の中で、子供だけではなく大人も捉えたい。メタバースは将来的にはコミュニケーションの1つになる。今から触れておき、研究も含めて挑戦していこうと考えた」。

 山﨑氏の所属するMoonshot事業部は、最新のテクノロジーを遊びに生かす方法を考えるセクション。タカラトミーのユーザーをZ世代以上に拡大しようと、メタバースには20年頃から着目していたという。

 開発を進めるため、タカラトミーが欲しかったのはプレイヤーデータだった。ある程度、プレイヤーの人物像が分かれば、よりユーザーに適したゲーム開発につながる。しかし、クラスターには年齢や性別を入力といったデモグラフィックデータを入力する仕組みがない。そこでゲームの退出時に、期間限定でタカラトミーのサイトに飛ぶ仕組みを導入。プレイヤーの「年代」「性別」「満足度」の3問に答えてもらい、プレイした人物の解像度を少しでも高めることを目指した。

 メタバース上の遊びを拡大する上で、「個人間のコミュニケーションが鍵になる」と山﨑氏。ユーザー同士が意見を活発に交換し、将来的にはタカラトミーと一緒に玩具を作り上げるといった可能性も見据える。

 黒ひげ危機一発に限らず、「ルービックキューブ」や「人生ゲーム」など、リアルの体験を重視したロングセラーの玩具はまだたくさんある。リアルの良さとメタバースが融合することで、今後も、今までに無かった新たな玩具が誕生していくだろう。

(文/寺村 貴彰、写真提供/タカラトミー)

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